大学院生だった頃から,ソーシャルメディア上の顧客間インタラクションに関心を持ってきた。大学院生時代のインタラクションの中身は言葉の交換,すなわち口コミの受発信であった。現在の関心は時間,スキル,不動産,自動車などの余剰資源を売買,すなわち経済的なインタラクションにシフトしつつあるが,言葉の交換にしても余剰資源の交換にしても,それを実現する場がソーシャルメディアであることには変わりない。
ソーシャルメディアは低コストに地理的制約なくして他者と交流できる便利なツールである。一方で,ソーシャルメディアの情報は言うまでもなく玉石混交である。ソーシャルメディア上の情報はプロのライターが注意深く取材した根拠のある情報とは限らないため,メディアリテラシーの低い消費者は偽情報に踊らされる危険性がある。意思決定の質を高める有力な支援ツールだったはずの第三者の口コミやレビューも,やらせやサクラの問題が後を絶たない。ツイッター上のバーストは,ポジティブなツイートの場合は熱狂的な支持として可視化されるが,ネガティブな場合は個人や企業への誹謗中傷が炎上という形で可視化されてしまう。ソーシャルメディアはまさに諸刃の剣といえる。本特集号では熱狂,炎上,レビュー有用性といったソーシャルメディアの利点とリスクの両方が議論されている。非常に質の高い論文を投稿してくださった著者の先生方に感謝したい。