近年のデジタル化による技術革新は,短命で,アクセスベースで,脱物質的なリキッド消費を促進している。このような消費環境の変化は,心理的所有感(psychological ownership)を減衰させたり,他の対象へと転移させたり,維持するための新たな機会を生み出したりしている。本研究では,心理的所有感の根底にある動機として,コントロール欲求に着目し,音楽配信サービスに対する心理的所有感の醸成にどのような影響を及ぼしているのかについて検証した。調査は,音楽配信サービスであるSpotifyまたはApple Musicを週に1回以上利用する人を対象に実施された。分析の結果,コントロール欲求がサービスへの心理的所有感やロイヤルティに及ぼす影響は,利用頻度によって異なるだけでなく,サービスの違い(Spotify/Apple Music)によっても異なるパターンが示された。これらのことから,コントロール欲求が心理的所有感に及ぼす影響は,他の要因(e.g.,利用頻度)によって調整されるため,コントロール欲求が高いと心理的所有感も醸成されやすいというほど単純ではないことが示唆される。