マーケティングジャーナル
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特集論文 / 招待査読論文
スウェーデンの起業家大学から生まれるハイテク・スタートアップ
田路 則子五十嵐 伸吾
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2024 年 43 巻 4 号 p. 31-42

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抄録

スウェーデンの産業都市ヨーテボリ市のチャルマース工科大学は,起業家大学として知られる。大学を核に地域の技術シーズを活用し,地方都市ながら生存率が高く卓越したスピンオフを数多く輩出してきた。本稿では,「サロゲート型」と「非サロゲート型」の起業類型に沿い,事例を交えつつ,シリコンバレーとは異なる,独自の起業エコシステムを紹介する。「サロゲート型」では,内外の技術シーズを発掘し新たな製品サービスを事業化する。サロゲート型起業は,起業家養成修士課程の学生の経営チームに典型的である。「非サロゲート型」では,ポスドク等の研究者が経営者となり自身の技術の事業化を目指す。サロゲート型も非サロゲート型も,大学が投資やインキュベータ施設を提供し,地元のエンジェル,企業関係者や大学OB起業家等ベテランがメンターとなって若い起業家を支える。地道な資金調達を行い,経営資源を節約しリーンな組織体制を敷く。事例として紹介するライフサイエンス系2社では,医師等の専門家を技術顧問にし,新しい治療の普及に尽力する。また,ライセンスアウトや特注製品の開発などにより,複線的収益モデルを追求する。

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© 2024 The Author(s).

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