マーケティングジャーナル
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最新号
企業家マーケティング
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
巻頭言
  • 栗木 契
    2024 年 43 巻 4 号 p. 3-5
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
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    The role of entrepreneurs is becoming increasingly important in Japanese industry and society. This role involves realization of innovations that broadly bring about more advanced lifestyles and production. The challenges of entrepreneurial marketing research are multilayered. In this special feature issue, we focus on a wide range of marketing phases to invigorate the activities of entrepreneurs responsible for innovation in a company or society. Innovation can broadly be divided into technology innovation, reliant on technological novelty; and value innovation, reliant on market novelty. The latter arises from the market and is crucial for marketing. We lack a sufficient understanding of the motivations and abilities entrepreneurs require to drive value innovations, and how to interact with the environment to manifest these individual motivations and abilities for value innovations. This special issue aims to advance these explorations in order to enhance value innovations.

特集論文 / 招待査読論文
  • ― ベンチャーの事業成長を起動する「シンボル」の影響力 ―
    軸屋 泰隆, 山田 仁一郎
    2024 年 43 巻 4 号 p. 6-17
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
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    本研究は,ベンチャーの事業成長可能性を高める「起業家的シンボリック・マネジメント」の重要性とその影響力を示唆する概念研究である。「シンボリック・マネジメント」とは,複雑な市場環境においてベンチャーが取り組む新しい事業の識別可能性を高め,その意味を効果的に伝える手段である。また,「シンボリック・マネジメント」とは,ステークホルダーの想像力に訴えながら,「シンボル」それ自身の意味の連想をステークホルダーに誘発させる手段でもある。本研究は,ベンチャーは,「シンボリック・マネジメント」を適切に実践することで,熾烈な市場環境を生き抜き,自身の存続可能性を引き上げることが可能となることを概念的に示唆する。

  • ― 持続的なBMIプロセスを可能とするイントラプレナーの意思決定と行動 ―
    柳 淳也, 吉田 満梨, 並木 州太朗, 竹林 一, 今庄 啓二
    2024 年 43 巻 4 号 p. 18-30
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
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    大手電気機器メーカーの事例から,大企業におけるビジネスモデル革新(BMI)という文脈において,コーゼーションとエフェクチュエーションという異なる意思決定のロジックが,「なぜ」,「どのように」組み合わせられるのかについて,本研究では新たなパターンを提示した。具体的には,エフェクチュエーションの実践を短期的にはコーゼーションの評価基準から独立させる重要性と共に,長期的には2つのロジックを組み合わせることの積極的な意義が見出された。こうした知見は,既存のビジネスとは非連続な新しい事業を生み出すイノベーションのプロセスに関する研究や,エフェクチュエーションの研究に対して,新たな視点を加えるものである。

  • 田路 則子, 五十嵐 伸吾
    2024 年 43 巻 4 号 p. 31-42
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
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    スウェーデンの産業都市ヨーテボリ市のチャルマース工科大学は,起業家大学として知られる。大学を核に地域の技術シーズを活用し,地方都市ながら生存率が高く卓越したスピンオフを数多く輩出してきた。本稿では,「サロゲート型」と「非サロゲート型」の起業類型に沿い,事例を交えつつ,シリコンバレーとは異なる,独自の起業エコシステムを紹介する。「サロゲート型」では,内外の技術シーズを発掘し新たな製品サービスを事業化する。サロゲート型起業は,起業家養成修士課程の学生の経営チームに典型的である。「非サロゲート型」では,ポスドク等の研究者が経営者となり自身の技術の事業化を目指す。サロゲート型も非サロゲート型も,大学が投資やインキュベータ施設を提供し,地元のエンジェル,企業関係者や大学OB起業家等ベテランがメンターとなって若い起業家を支える。地道な資金調達を行い,経営資源を節約しリーンな組織体制を敷く。事例として紹介するライフサイエンス系2社では,医師等の専門家を技術顧問にし,新しい治療の普及に尽力する。また,ライセンスアウトや特注製品の開発などにより,複線的収益モデルを追求する。

  • ― 福岡における起業コミュニティの形成 ―
    二宮 麻里, 大田 康博, 三井 雄一
    2024 年 43 巻 4 号 p. 43-55
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
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    本研究では,地方中核都市における起業コミュニティ形成の先端事例として福岡市をとりあげる。1980年代から現在までの文献資料を収集し,福岡市における起業支援で重要な組織や個人を特定して半構造化インタビューを行い,データを時系列で整理した結果,以下の事実が分かった。同市の起業活動は,福岡市の行政支援だけではなく,1980年代以降に福岡県が整備した産業振興・ベンチャー支援インフラも活用して展開された。福岡市では,起業が誰にとっても身近なキャリアの選択肢となる「起業の民主化」を進め,そこでは,官と民,県と市などの組織的な境界を越えて活動する「越境者」が重要な役割を果たした。同市による「起業の民主化」アプローチは,高成長スタートアップを選択的に支援すべきとする海外の起業エコシステム研究の主張と対照的だが,起業が不活発な社会における一つの選択肢を示している。

レビュー論文 / 招待査読論文
  • 北澤 涼平
    2024 年 43 巻 4 号 p. 56-63
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
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    偽造ラグジュアリー製品とは,オリジナルのラグジュアリー製品と見た目が同一の製品を指し,消費者は,そうした製品を,偽造品であると完全に認識した上で購買することがある。このような消費者の購買行動を説明すべく,既存研究は,消費者の偽造ラグジュアリー製品の購買動機について探究してきた。しかしながら,当該領域の最新動向を詳細にレビューした研究は存在しない。そこで,本論は,マーケティング領域の主要学術誌に掲載された最新の論文10篇を選定し,それらを,社会的観点,道徳的観点,認知的観点,オンライン行動的観点という4つの観点に基づいて,整序する。そして,今後の研究の方向性として,ラグジュアリー製品の2次流通市場やサブスクリプション・サービスの存在が偽造品購買に及ぼす影響の探究,および,ラグジュアリー製品が提供する経験価値が偽造品購買に及ぼす影響の探究という2つを指し示す。

  • 趙 悦紅
    2024 年 43 巻 4 号 p. 64-72
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
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    優れたサービス企業であっても,サービスの提供過程で失敗を回避することは難しい。サービス失敗とは,提供されたサービスが顧客の期待を下回ることを指す。そのような失敗が引き起こす様々な顧客の反応には,サービス提供者に対する直接的または間接的な不満の伝達からネガティブなクチコミまで多岐にわたる。これらの反応は総称して「顧客苦情行動」と呼ばれる。本論文は認知―感情アプローチに焦点を当て,顧客苦情行動に関する2つの重要な先行文献群を包括する。第一の文献群は顧客苦情行動の概念の発展に焦点を当て,その多面的な性質を明らかにする。第二の文献群は認知,感情,個人の属性,および状況要因を含む顧客苦情行動の先行要因を検討する。これらの先行文献群を体系的に整理することで,本論文は顧客苦情行動の理論的発展を明らかにし,その研究課題を特定する。特に,本論文は将来の研究に向けて3つの異なる方向性を提案し,学問的な探求を進展させ,サービス環境における顧客苦情行動の複雑さに関する理解を深めることを目指す。

投稿査読論文
  • ― 日本の上場企業の正規従業員を対象とした調査に基づく実証 ―
    加藤 拓巳, 池田 亮介, 小泉 昌紀
    2024 年 43 巻 4 号 p. 73-85
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
    [早期公開] 公開日: 2023/11/08
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    インターナルマーケティング(IM)は,従業員を顧客として捉え,社内施策に焦点が置かれる。しかし,消費者向け広告は,従業員が仕事の社会的影響を認識したり,意識改革の機会となる。ビジネスではこのような活動が見られるが,研究としては知見が乏しい。本研究は,IMの文献で議論されてきた9つの要因(能力獲得,賃金,ワークライフバランス,上司との信頼関係,人材の多様性,オフィス設備,社員食堂,先端技術,パーパス)に加えて,本研究の仮説である広告を含めた10要因を対象とし,満足と転職意向への影響を明らかにした。日本における10業界(自動車,電機,医療機器,食料品,不動産,IT,金融,小売,サービス,行政)の正規従業員5,000人を対象にオンライン調査を実施し,共分散構造分析を適用した。その結果,広告は満足には効果が検出されず,転職意向で有意な正の効果が見られた。さらに,企業としては規模の小さい組織,従業員属性としては若い世代ほど,転職意向が高まりやすいと確認された。この結果は,広告を通じた社内コミュニケーションを図る際,転職意向が高まらないよう配慮が必要であると警鐘を鳴らしている。

マーケティングケース
  • ― 「日本の地方」と「世界の旅人」をつなぐワンダートランク社 ―
    小野 雅琴
    2024 年 43 巻 4 号 p. 86-95
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
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    株式会社wondertrunk & co.は,「日本の地方を世界の旅行地に変える」をミッションに2016年に設立されたインバウンド専門会社である。本論は,観光地を製品として捉える観光マーケティングと従来のマーケティングの違いを踏まえ,日本の今後の観光政策の方向性,すなわち,「持続可能な観光」,「消費額拡大」,および「地方誘客促進」を実現すべく,欧米富裕層をターゲットに観光マーケティングを実施してきた当社の取り組みを検討する。具体的には,観光庁・自治体と共同で実施するディスティネーションマーケティング事業,および,欧米富裕層向けの旅行会社事業に焦点を合わせて分析し,徹底的なマーケティング分析やSTP戦略の立案,海外旅行会社との関係構築,そしてラグジュアリーな観光サービスのカスタマイゼーションを,成功要因として同定する。

  • ― 久保木畳店の海外進出 ―
    白石 秀壽
    2024 年 43 巻 4 号 p. 96-105
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
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    畳は日本の伝統的床材であるが,住宅の洋風化に伴い,市場は衰退傾向にある。一般に,畳屋は地域に根差して事業を展開している。なぜなら,畳を敷き込む際には,部屋の間取りや柱の位置に応じて,高さやサイズを調整する熟練の職人的技能が不可欠で,規模の経済を発揮できないからである。また畳は差別化が難しい製品でもある。それゆえに畳業界は典型的な多数乱戦型業界となる。そのような中で,久保木畳店は,全国の飲食店に畳のコースターを販売し,小物だけでなく畳のマットを海外に販売し,工場,カフェ,小物ショップ,ショールームを併設の複合型施設をオープンした。本論では,地方の零細畳店の海外進出について検討し,それが既存の畳事業に好影響を与えたことを検討する。

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