マーケティングジャーナル
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レビュー論文 / 招待査読論文
我が国における黎明期の観光マーケティング研究
― 1961年~1970年の傾向 ―
外山 昌樹
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キーワード: 研究史, TCCM, TITIMシステム
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2025 年 45 巻 2 号 p. 140-147

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Abstract

本研究は,黎明期(1961年~1970年)における我が国の観光マーケティング研究の傾向を明らかにすることを目的とした。主要な学術研究に関するデータベースと論文検索エンジンを対象に文献数を調査したところ,最終的に20の文献が抽出された。これらの文献を対象に,TCCMフレームワークを用いて研究傾向を分析した。その結果,以下の4つの傾向が明らかになった。(1)Theory(理論)については既存理論の活用が行われつつ,新たな理論モデルの提示が試みられていた。(2)Context(文脈)については,訪日外国人旅行市場や観光産業を対象とした研究が相対的に多かった。(3)Characteristics(特性)については,観光マーケティングに影響を与える変数としての外部環境への着目度が高く,観光マーケティングの成果として外貨獲得による経済発展や国際平和への貢献に対する言及が多かった。(4)Methodology(方法)については,実証研究が少なかった。

Translated Abstract

This study assessed trends in research on tourism marketing in Japan during the 1960s and 1970s. Several articles were surveyed in major academic research databases and an academic paper search engine to determine the number of references, ultimately pinpointing 20 references. Research trends were analyzed for these articles using the TCCM framework. The following four trends were identified: (1) T (Theory), existing theories were employed alongside an endeavor to introduce a new theoretical model; (2) C (Context), a relatively large number of studies have focused on inbound travel and tourism industries; (3) C (Characteristics), the studies focused more on the external environment as an independent variable in tourism marketing, and many of the references referred to the economic impact through the acquisition of foreign currency and contribution to international peace as the outcomes of tourism marketing; and (4) M (Methodology), few empirical studies have so far been conducted.

I. はじめに

2003年に当時の小泉純一郎首相によって,「観光立国」を推進する方向性が示されたことが契機となり,観光振興は我が国にとって重要な政策課題となった(Kagawa, 2010)。その位置づけは現在も変わっておらず,2023年に閣議決定された「観光立国推進基本計画」では,観光は我が国の成長戦略の柱であることが述べられている(Japan Tourism Agency, 2023)。そうした中,観光領域を対象としたマーケティングである観光マーケティングの研究知見は,観光地や観光関連企業のマーケティングを効果的に展開することで経済成長を目指す観点から重要である。

近年,観光マーケティングに関する研究は増加傾向にあると考えられる。簡易的な集計ではあるが,論文検索エンジンのGoogle Scholarで「観光マーケティング」のキーワード検索を行うと,観光立国に向けた動きが本格化する以前の2002年までは52件であったところ,2003年からの5年間で68件とそれまでの論文数を超え,その後も論文数が増加し続けている1)

このように研究の蓄積が進む中,これまでどのような研究が行われてきたのかを整理・分析すること,すなわち研究史を検討することは,知見の体系化を行う上で意義がある。しかしながら,我が国における観光マーケティングの研究史に関する検討は管見の限り見当たらない。そこで本研究では,観光マーケティングの研究史を解明する最初のステップとして,黎明期における我が国の観光マーケティング研究の傾向を明らかにする。後述するように,我が国における観光マーケティング研究に関する最初の文献は1961年に発表されている。この事実に基づき,本研究では便宜的に10年間という区切りを設け,1961年~1970年において観光マーケティング研究に関する文献数がどれほどあったのか,そしてどのような内容の研究が行われていたのかについて解明を試みる。

II. 研究方法

1. 調査対象

我が国における観光マーケティング研究に関連する文献を収集するために,主要な学術研究に関するデータベースであるCiNii ResearchとJ-STAGEを文献調査に用いることとした。また,主要な論文検索エンジンのGoogle Scholarも調査対象とした。さらに,学術誌以外の書籍や専門雑誌など多様な種類の文献が収録されている,国立国会図書館デジタルコレクション(以下,NDLデジタルコレクション)も調査対象とした。

2. 検索キーワード

「観光マーケティング」というキーワードが含まれる文献と,「観光」および「マーケティング」の両方のキーワードが含まれる文献を検索することとした。また,主に1950年代~1960年代においては「マーケッティング」という表記が用いられることもあった点2)を考慮し,「観光マーケッティング」のキーワードが含まれる文献と,「観光」および「マーケッティング」の両方のキーワードが含まれる文献を検索することとした。

3. 文献の選定基準

現代のマーケティング研究では,査読付き学術誌に研究成果を発表することが一般的となっており,研究レビューの対象を査読付き学術誌に限る場合もある(たとえばMari, 2023; Wang, 2023)。しかしながら,1992年に査読付きの学術誌として「マーケティング・サイエンス」(日本マーケティング・サイエンス学会)が,そして1998年に「流通研究」(日本商業学会)が発刊されたことを踏まえると,我が国のマーケティング研究においては,1990年代以降に査読付き学術誌への研究発表が進んだといえる。それ以前においては,書籍や専門雑誌など様々な媒体に研究成果が発表されていたと考えられる。そこで本研究では,書籍,専門雑誌,大学紀要,学会誌に収録されている文献を収集することとした。

また,上記の媒体に掲載された文献のうち,著者が研究者または実務家,あるいは複数の研究者/実務家によって組織されたグループが著者であると推定される文献を分析対象とした。これは,観光マーケティングに関連する内容であっても,事例紹介や時事解説といった学術的要素が薄い文献を除外するためである。さらに本研究では,キーワードが文献内に1か所だけ記載されているといったように,観光マーケティングが主題として論じられていない文献は分析対象から除外した。

4. 調査期間の特定

我が国における観光マーケティング研究の黎明期の傾向を解明するにあたっては,第一に観光マーケティングに関する研究の起源を特定することが必要である。そこで,前節に述べた文献の選定基準を用いて,調査対象のデータベース/検索エンジンに対してキーワード検索を行ったところ,基準に該当する最も古い文献の発表年は1961年であった(表1)。この結果を踏まえ,本研究では1961年をスタート地点とし,1970年までの10年間を黎明期として捉え,この間の研究傾向を分析することとした。

表1

分析対象の文献一覧

※C:Cinii Research,G:Google Scholar,J:J-STAGE,N:NDLデジタルコレクションを表す。

5. 文献数と分析方法

Cinii Research,Google Scholar,J-STAGE,NDLデジタルコレクションを対象に先に述べた方法でキーワード検索を行ったところ,1961年~1970年の期間で404の文献が抽出された。これらの文献のうち,研究者または実務家が著者の中に入っていないと推定される文献と,観光マーケティングが主題として論じられていない文献を除外したところ,最終的に分析対象となった文献数は20であった(表13)

分析対象となった20の文献内容については,TCCMというフレームワークを用いて分析した。このフレームワークでは,Theory(T),Context(C),Characteristics(C),Methodology(M)の4つの側面から文献内容を分析する。TCCMはPaul and Rosado-Serrano(2019)によって提唱された後,2020年以降のマーケティング領域のレビュー論文において広く用いられている(Shimul, 2022)。またTCCMは,4つの側面から分析することにより,包括的な研究領域の理解を可能とする特長がある(Roy Bhattacharjee et al., 2022)ことから,本研究においても有効な分析のフレームワークであると判断した。

III. 分析結果と考察

1. 全体的な傾向

最終的に分析対象となった文献の一覧を,表1に示す。既述の通り,我が国における観光マーケティング研究に関する最も古い文献の発表年は,1961年であった。我が国では,1950年代にはマーケティングに関する学術書の発行が盛んになっていた(Nemoto, 1999)。この点を踏まえると,観光マーケティング研究は,製造業などの他の産業を対象としたマーケティング研究に比べるとやや遅れて始まったと推察される。

文献の種別について見ると,書籍が4冊,事典記事・ブックチャプター・年鑑記事といった書籍内の一部を構成する文献が5本,専門雑誌記事が7本,大学紀要や学会報告に掲載された論文が4本であった。複数の文献で著者になっている人物は,大野和雄,末武直義,津田昇,広野穣,村田昭治であった。このうち,村田昭治(1932~2015)は我が国のマーケティング研究の先達として知られている。村田の代表的な研究業績としては,ライフスタイル研究(Murata et al., 1979)があげられるが,本研究ではキャリアの初期において観光マーケティングも研究テーマの1つであったことを明らかにした。

次節以降は具体的な文献内容について,TCCMの4つの側面別に整理・分析を行う。分析対象となった研究群の代表的な傾向を見出す観点から,複数の文献で取り上げられていた内容を中心に述べることとする。

2. T(Theory):理論

T(Theory)は,分析対象の研究群における既存理論の活用状況や,理論構築の状況に関する考察を行う節である(Paul & Rosado-Serrano, 2019; Shimul, 2022)。既存理論の活用状況については,消費者行動に関する動機理論やイメージ理論が複数の文献で言及されていた。

消費者行動における動機理論は,消費者の購買動機が購買行動を導くことを仮定したものである。分析対象のうち,動機理論について言及していた文献は9つであった。これらの研究では,消費者の様々な購買動機を分類することが行われていた。たとえばMurata(1964)は,消費者の観光旅行に対する代表的な動機について,慰安的動機,文化的動機,保健的動機,宗教的動機,経済的動機,社会的動機の6つにまとめている。Kanko senden kenkyu iinkai(1967)は,観光旅行に対する動機として,未知と目新しさへの期待があることを指摘している。我が国の観光マーケティング研究において,動機は近年でも複数の研究(たとえばSatoh & Yagi, 2021; Sayama, 2022)が発表されるなど,しばしば検討が行われるテーマである。観光動機の研究が,我が国における観光マーケティング研究の黎明期からすでに行われていたことを明らかにしたのは,本研究の新たな発見である。

消費者行動におけるイメージ理論は,消費者の企業や製品カテゴリー,ブランドに対する知覚を指すイメージが,購買行動を導くことを仮定したものである。我が国では1960年代前半に,企業イメージやブランドイメージ関する研究成果(たとえばHayashi, 1960)が発表されており,観光マーケティング研究においても応用が試みられたといえる。

分析対象のうち,イメージ理論について言及していた文献は,Ichihashi(1961)Kanko senden kenkyu iinkai(1967)の2つであった。いずれの文献も,国内観光地のイメージについてアンケート調査を行っている。観光地イメージは,観光マーケティング研究において主要なテーマの1つであり,海外では1970年代前半から研究が本格化したとされている(Pike, 2002)。その一方で,1960年代前半から観光地イメージに関する検討が行われていた点は,我が国の観光マーケティング研究の先進性を示唆している。

ここまで,分析対象の研究群における既存理論の活用状況について整理してきたが,理論構築の状況はどうであっただろうか。観光マーケティングの独自理論を生み出そうとした意欲的な取り組みとしては,TITIMシステム(Kanko sangyo kenkyujo, 1967; Murata, 1970)がある(図1)。

図1

TITIMシステム

出典:Kanko sangyo kenkyujo (1967), Murata (1970)

1にあるように,TITIMシステムでは,観光マーケティングには交通業者,ホテル・旅館,政府,協会と複数の組織が関わることが示されている。このように,観光マーケティングには複数の関係者が存在する点は,現代においても観光地のマーケティングの特徴として指摘されている(Toyama, 2018)。1960年代の時点でこの点が示されていたことは,TITIMシステムの先駆性を示唆している。複数の関係者の中で司令塔となる組織が明示されていなかったり,システム内の記述が何を指すのか明確にされていない点が見られたりするといった問題点は見られるものの,TITIMシステムは,観光マーケティングの全体像を整理しようとした先駆的な理論モデルとして評価できる。

3. C(Context):文脈

C(Context)は,分析対象の研究の文脈,すなわち研究の設定(research settings)について考察を行う節である(Bubphapant & Brandão, 2024; Paul & Rosado-Serrano, 2019)。本研究では,観光マーケティング領域の先行研究(Morrison, 2022; Toyama, 2018)を参考にしながら,市場の種類と,マーケティング対象の種類の2つを文脈の整理軸として設定する。

観光旅行市場は,訪日外国人旅行市場と,海外旅行市場,国内旅行市場の3つに大別される(Morrison, 2022; Toyama, 2018)。各文献が検討した市場についてまとめると,訪日外国人旅行市場のみを検討したと読み取れる文献数は8,国内旅行市場のみを検討したと読み取れる文献数は4,訪日外国人市場と国内旅行市場の双方を検討したと読み取れる文献数は3であった。その一方で,海外旅行市場を検討したと読み取れる文献は存在しなかった。また,特定の市場を検討したわけではないと考えられる文献数は5であった。これらの結果から,訪日外国人旅行市場への注目度が相対的に高かった傾向がうかがえる。しかしながら,国際的な旅行という点では訪日外国人旅行と同じ性質を持つにもかかわらず,海外旅行市場を対象とした研究はこの時期に行われていなかったようである。海外渡航の自由化は1964年4月から開始されたことから,他の市場に比べて遅く立ち上がった点が影響した可能性を指摘できる。

観光マーケティングの対象は,宿泊業や旅行業といった観光産業と,観光地そのものの2つに大別される(Morrison, 2022; Toyama, 2018)。各文献の検討対象についてまとめると,観光産業のマーケティングのみを検討したと読み取れる文献数は6,観光地のマーケティングのみを検討したと読み取れる文献数は3,観光産業と観光地の双方のマーケティングを検討したと読み取れる文献数は10であった。これらの結果から,観光地よりも観光産業を対象とした研究がやや多かった傾向がうかがえる。

4. C(Characteristics):特性

C(Characteristics)は,分析対象に関連する様々な変数について考察を行う節である(Paul & Rosado-Serrano, 2019; Shimul, 2022)。本研究では,Paul and Rosado-Serrano(2019)の整理に基づき,観光マーケティングの独立変数と従属変数について考察する。

マーケティングの独立変数には,組織の内部環境と外部環境に存在する様々な要因が含まれる(Inoue & Ishida, 2021; Kotler et al., 2020)。分析対象の研究群を紐解くと,観光マーケティングの独立変数として考えられる要因のうち,内部環境に該当するものとしては宿泊施設の種類に関する言及が見られた。Shimizu(1967)は,宿泊施設の種類によってマーケティングのあり方が異なることを指摘している。しかしながら,他に内部環境に関わる要因についての明示的な言及は見られなかった。この点を踏まえると,我が国における黎明期の観光マーケティング研究は,外部環境への着目度が高かったようである。

外部環境に該当する具体的な要因としては,消費者の所得水準や経済成長といった経済的環境に関する言及が最も多く,計7つの文献が取り上げていた。次いで言及が多かったのは,休日制度や観光に関わる規制を含む政治的環境であり,計5つの文献が取り上げていた。その他,繁閑の差が大きい季節性が見られる点や,交通インフラの整備についての言及が複数の文献で見られた。

観光マーケティングの従属変数として考えられるものとしては,経済発展や国際平和が複数の文献で言及されていた。とりわけ,訪日外国人旅行を通じた外貨獲得による経済発展に関する言及が目立っており,計5つの文献に同趣旨の記述が見られた。その一方で,国内観光や海外旅行に関する経済効果について言及した文献はほとんど見られなかった。当時の観光マーケティング研究では,訪日外国人旅行による経済効果に注目していた傾向がうかがえる。なお,近年でも複数の論文(Morita, 2022; Yagasaki, 2020など)で言及されるなど,訪日外国人旅行による経済効果は注目されているところであり,この点には時代を超えた共通性があるといえる。

国際平和については,国際交流を通じて国際平和に寄与するという論調の記述が複数の文献で行われていた。1967年は,国際連合が「観光は平和へのパスポート」というスローガンのもと,国際観光年として指定した年である。このような時代背景もあり,1960年代半ばには国際平和に対する貢献に関心が寄せられていたのかもしれない。

5. M(Methodology):方法

M(Methodology)は,は,分析対象の研究群で用いられた研究方法に関する考察を行う節である(Bubphapant & Brandão, 2024; Paul & Rosado-Serrano, 2019)。分析対象の研究群を紐解くと,定量的な実証研究を行っている文献は4つであった。定量的な実証研究に該当すると考えられる文献のうち,消費者を対象としたアンケート調査のデータ分析を行った文献数は2であり,残りの2つは観光客数のデータなどを用いて需要推定を行った文献であった。ここで現代の観光マーケティング研究について見てみると,実験やデータマイニングなど,多様な研究方法が活用されている(Dolnicar & Ring, 2014)。この状況と比較すると,黎明期であるがゆえに,用いられた研究方法の種類が限定的であった傾向がうかがえる。なお,定性的な実証研究を行っている文献は確認できなかった。

非実証研究に該当すると考えられる文献のうち,既存の調査や先行研究を基に,テーマに関する分析や考察を加えた概念的研究と捉えられる文献数は10であった。非実証研究に該当すると考えられる文献のうち,テーマに関する概要を解説したスタイルの文献数は6であった。これらの点を踏まえると,我が国における黎明期の観光マーケティング研究では,実証研究の蓄積が進まなかった傾向があることを指摘できる。

IV. おわりに

本研究は,我が国における観光マーケティング研究の黎明期の傾向を明らかにすることを目的に実施した。本研究では,1961年~1970年を黎明期として捉えた上で,主要な学術研究に関するデータベースおよび論文検索エンジンを用いて調査を実施したところ,観光マーケティング研究について論じた20の文献が抽出された。これらの文献について,本研究ではTCCMフレームワークを用いて,理論,文脈,特性,方法の4つの側面から研究傾向を明らかにした。

本研究の学術的な意義は,2点ある。1つ目は,我が国における観光マーケティング研究の初期段階の研究傾向を包括的に解明した点である。その過程において,村田昭治の観光マーケティング研究に関する業績が明らかになったことで,特定の業界を対象としない,一般的なマーケティング研究史に新たな知見を提供したことも本研究の貢献である。2つ目は,研究史の検討にあたってNDLデジタルコレクションが有用なツールとなり得ることを示した点である。NDLデジタルコレクションは2022年12月にリニューアルを行い,全文検索可能な資料が増加した(National Diet Library, 2022)。これに伴い,見出しやタイトルだけでは見つけ出すことができなかった文献を把握できるようになり,研究史をより精緻に検討することが可能になった。実際に本研究では,NDLデジタルコレクション以外の検索元では4つの文献しか抽出されなかったところ,NDLデジタルコレクションを活用することにより16の文献を抽出できた。ちなみに,Tanaka(1962)が収録されている日本マーケティング協会(編)『マーケティング便覧』の目次を見ると,証券業や保険業,映画業など様々な産業のマーケティングについて解説した章の存在を読み取れる。これは,1960年代の段階で個々の産業に特化したマーケティング研究が進展していた可能性を示唆する傍証である。NDLデジタルコレクションや他のデータベース・検索エンジンを組み合わせることにより,他産業のマーケティングについても研究史の解明が期待される。

最後に,本研究の限界と課題について述べる。本研究は,各種データベースや検索エンジンを用いて文献収集を行ったが,こうしたデータベースや検索エンジンに収録されていない文献の存在も想定される点が限界といえる。本研究の検索元である各種データベースは定期的に収録文献が増えているため,今後も追加調査を行っていく点が課題である。また,1971年以降の研究傾向についても検討を進め,我が国における観光マーケティング研究史の解明を果たすことも今後の課題である。

Data Availability

本研究の根拠データは,一次データではなく二次データであり,データの出所は,本文中に記載したとおりである。


1)文献の件数は,2024年5月時点での調査結果に基づく。

2)たとえば,我が国で初めて書名に「マーケティング」という用語が入った学術書であるHamano and Kamioka(1953)の書名の表記は「マーケッティング」である。また,我が国におけるマーケティングの本格的な展開に貢献したと評価されている,日本生産性本部が1956年に編成した海外視察団の名称も「第一次マーケッティング専門視察団」である(Toda, 2017)。

3)本調査結果は,2024年5月時点での数値である。

References

外山 昌樹(とやま まさき)

高崎経済大学地域政策学部観光政策学科准教授。筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。公益財団法人日本交通公社,淑徳大学を経て2023年4月より現職。専門は観光マーケティング,消費者行動。

 
© 2025 The Author(s).

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https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
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