マーケティングジャーナル
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Print ISSN : 0389-7265
レビュー論文 / 招待査読論文
B2Bコミュニティにおける参加行動
― B2Bブランド・コミュニティおよびプロフェッショナル・コミュニティ研究の文献レビュー ―
長橋 明子
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ジャーナル オープンアクセス HTML

2025 年 45 巻 2 号 p. 148-155

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Abstract

2000年代以降,インターネットやソーシャルメディアの普及を背景にコミュニティへの関心が高まっている。業務上の課題解決や個人の能力向上のためコミュニティに参加するビジネスパーソンも増える中,B2C(企業対消費者取引)市場に限らずB2B(企業間取引)市場においても顧客間の知識共有を目的としたコミュニティの取り組みが増加している。B2Bを対象としたコミュニティ研究には2000年前後に始まる二つの潮流が存在する。一つ目はブランド・コミュニティ研究の枠組みの中でB2Bブランドに焦点を当てた研究であり,二つ目はプロフェショナル間の知識共有を対象としたプロフェッショナル・コミュニティに関する研究である。本研究では,B2Bブランド・コミュニティとプロフェッショナル・コミュニティという二つの研究領域を対象に文献レビューを行い,コミュニティ参加行動の理論的背景と先行要因および結果を概括するとともに,今後の研究課題を提示する。

Translated Abstract

Since the 2000s, interest in brand communities has grown with the rise of the internet and social media. While many businesspeople participate in communities to solve work-related issues and improve their individual abilities, there has also been an increase in the number of communities that aim to share knowledge among customers, not only in the business-to-consumer (B2C) context, but also in the business-to-business (B2B) context. Two streams of community research targeting B2B began in 2000. The first is research that focuses on B2B brands within the framework of the brand community. The second is research on professional communities that targets knowledge sharing among professionals. This study is a literature review of B2B brand communities and professional communities that summarizes the theoretical background, antecedents, and consequences of participation behavior, while also presenting an important future research agenda.

I. はじめに

2000年代以降,実務と学術研究の両方の領域においてブランド・コミュニティへの関心が高まっている。ブランド・コミュニティとは,「当該ブランドを好む人々の社会的関係から構成される地理的な制約を伴わない特殊なコミュニティ」(Muniz & O’Guinn, 2001)であるとされる。インターネットやソーシャルメディアの普及などの技術的な環境の変化を受け,ブランドと顧客間,あるいは顧客同士の相互作用(インタラクション)が活性化したことが背景にある。

ブランド・コミュニティへの関心の高まりと共に,B2C(企業対消費者取引)市場のみならず,B2B(企業間取引)市場における取り組みも増加している。B2B市場におけるWebを活用したブランド・コミュニティの潜在的影響は大きく(Andersen, 2005),多くの個人が職業上の問題解決のためのナレッジを求めてコミュニティに参加している(Chiu et al., 2006)。一方で,これまでの主なコミュニティ研究はB2C領域を対象としており,B2Bのコンテキストに焦点を当てた研究は多くはなく,レビューは存在しない。そこで,本文献研究はB2Bコミュニティ研究のさらなる発展に向け,主要なテーマである「コミュニティにおける参加行動」を扱った研究を概括し,理論的背景,主な先行要因と結果を明らかにするとともに,今後に向けた重要研究課題を提示することを目的とする。

II. レビュー対象論文の選定と概要

1. B2Bコミュニティ研究の二つの潮流

B2Cコミュニティが消費者主体のものであるのに対し,B2Bコミュニティはビジネスパーソンが業務上の関心を持って参加するコミュニティである。B2Bコミュニティ研究には潮流が二つ存在する(図1)。一つはMuniz and O’Guinn(2001)から始まるブランド・コミュニティ研究の系譜である。Muniz and O’Guinn(2001)は,ブランド・コミュニティをその中心にブランド化された商品やサービスがある専門化されたコミュニティとして定義し,消費者の集まりである消費コミュニティと区別して「同類意識」「儀式と伝統」「道徳的責任の感覚」という3つの特徴を持つと整理した。ブランド・コミュニティ研究の中心は当初B2C領域であったが,研究が進展する中で,Andersen(2005)がリレーションシップ・マーケティングの枠組みを利用して医療分野におけるB2Bのオンライン・ブランド・コミュニティに焦点を当てた質的研究の論文を発表した。続いてBruhn et al.(2014)が発表した量的研究の論文では,B2Bブランド・コミュニティとは「インターネットという仮想空間に集まり,ブランドに関連する共通の経済的利益や目標に基づいて自発的に交流する,相互に関連するビジネスパーソンの集積」(Bruhn et al., 2014)であると定義される。参加者が特定のブランドに業務で関わるプロフェッショナルであるため,主に専門的な目的によって推進され,動機づけられている点がB2Cのブランド・コミュニティと異なる。

図1

B2Bコミュニティ研究の潮流と本研究の対象

B2Bのコミュニティでは,知識やアイデアなどのコンテンツの交換がメンバー間の相互作用を促進する(Sethi et al., 2024)。B2Bブランド・コミュニティ研究の多くに先行研究として参照されている文献として,プロフェッショナル・コミュニティにおける知識共有の研究の系譜がある。これが2つ目の潮流である。潮流の元であるWenger(1998)による「Community of Practice(実践コミュニティ)」研究は当初は組織内のナレッジ・マネジメントが対象であったが,やがて組織間の知識の共有へと派生し,様々な組織のプロフェッショナル同士が交流するコミュニティ研究へと発展していった。プロフェッショナル・コミュニティは実践コミュニティの拡張版であり(Hung et al., 2015),「知識労働者が自分の能力を向上させ,先進的な知識を吸収し,仕事上の問題を解決するために,知識を求め,収集し,あるいは貢献することを可能にする専門的コミュニティ」である(Lin et al., 2009)。プロフェッショナル・コミュニティ研究の議論の中心はブランドではなく,B2Bブランド・コミュニティ研究はブランドが中心にあるという点で異なるが,いずれもB2Bのコミュニティであるという点で共通する。そこで本研究では,B2Bブランド・コミュニティとプロフェッショナル・コミュニティの両方を「B2Bコミュニティ」として文献レビューを行う。

2. B2Bコミュニティにおける「参加行動」

コミュニティ参加行動の明確な定義は存在しないものの,一般的には能動的行動と受動的行動の二つに分けられる(Antonacci et al., 2017; Kamboj & Rahman, 2017)。能動的なメンバーはコミュニティで情報や知識を共有し,受動的なメンバーはコミュニティで提供される知識を得る形で参加する。オンラインのコミュニティにおいて知識や情報は「コンテンツ」として流通し,コミュニティの性格を形作る重要な原動力となり,参加者への影響を及ぼす(Bagozzi & Dholakia, 2002)。B2Bコミュニティにおいては,メンバー同士の相互作用の中心は専門的知識の流通である(Bruhn et al., 2014)。知識共有とはコミュニティに関連する情報,アイデア,提案,専門知識を個人間で共有することとされる(Yu et al., 2010)。

コミュニティが持続するためには,メンバーの参加が不可欠である。オンライン・コミュニティの70%は失敗しているという調査データも存在しており(Antonacci et al., 2017),どのようにメンバーに継続的に参加してもらうかという問題は実務家と研究者の両方にとって関心の高いテーマとなっている(Kamboj & Rahman, 2017)。そこで本研究においては,B2Bコミュニティにおけるメンバーの参加行動が議論の中心として扱われている文献を対象に,その理論的背景と参加行動の先行要因・結果についてレビューを行う。

3. レビュー対象論文の選定

B2Bブランド・コミュニティ研究はAndersen(2005)から始まる。またLin et al.(2009)によれば,プロフェッショナル・コミュニティ研究は少なくとも2000年より前から行われているとされる。そこでレビュー対象論文の選定に当たっては,2000年以降に発行された論文を対象とし,以下の3段階で行った。第1段階として,論文検索データベースWeb of Scienceを利用し,文献タイトル,アブストラクト,キーワードのいずれかを対象に“B2B brand community”,“B2B community”,“Professional community”および“Knowledge sharing”によるキーワード検索を行った。その結果,309件の論文が特定された。第2段階として,Chartered Association of Business Schoolsが提供するAcademic Journal Guideジャーナルリスト2024に掲載されているジャーナルに該当する論文の絞り込みを行った。その結果,217本が対象となった。第3段階として,コミュニティ参加行動がメインのトピックでないものを除外するため,各論文のアブストラクトおよび本文を確認し,コミュニティ参加行動または相互作用について定量または定性による実証分析が行われている論文を特定した。その結果,合計40本の論文が最終的なレビュー対象として選定された。

4. 選定論文の概要

レビュー対象の40本が掲載されたジャーナルのうち最も多いのは『Industrial Marketing Management』(5本)であった。その他に2本以上の論文が掲載されているのは『Journal of Service Research』,『Journal of the Association for Information Systems』,『Decision Support Systems』,『Information & Management』,『Online Information Review』であり,マーケティング研究とITシステム研究の両方における学術的関心の高さがうかがえる。続いて発行年を見ると,2000年から2004年に発行されたのは1本,2005年から2009年は8本,2010年から2014年は8本,2015年から2019年は15本,2020年から2024年は8本となっている。合計25年間のうち直近の10年以内に発行された論文が全体の58%を占めることから,この10年間でB2Bコミュニティの研究が活性化していることがわかる。

手法については,40本のうち30本は定量研究であり,10本は定性研究であった。定量研究の手法では構造方程式モデリング(SEM)を用いた分析が最も多い27本を占めた。その他の2本は回帰分析,1本は社会ネットワーク分析であった。これはオンライン・ブランド・コミュニティにおける参加行動を扱った実証的論文の大半でSEM,PLS,回帰分析が使われている(Kamboj & Rahman, 2017)点と一致する結果である。

III. コミュニティ参加行動の理論的背景

コミュニティ参加行動に影響を与える複雑な要因や結果を説明するため,文献では様々な理論が適用されている。本稿では主要な理論とそれを応用した文献をレビューする。

1. 社会的交換理論(SET)

個人がなぜコミュニティに参加し知識を共有する行動を取るのかという問題を解明するにあたり,社会的交換理論(Social Exchange Theory:以後SETとする)が今回レビューした文献の中で最も多く適用されていた(Bruhn et al., 2014; Gharib et al., 2017; Liao et al., 2013; Sethi et al., 2024; Tsai & Kang, 2019; Yang et al., 2016; Zhang et al., 2022)。SETは経済学における取引コストの論理を応用した理論であり,個人は社会的関係において行動する際にコストとベネフィットのバランスを元に関与することを決定するという考え方に基づく。SETは,B2Bコミュニティへの参加が社会的交換であると認識されていることから,コミュニティへの参加行動を調査するために用いられてきた最も影響力のある理論の一つである(Gharib et al., 2017)。B2Bコミュニティではメンバー間で社会的相互作用が起こり,仕事に関連した知識,経験,問題解決策が交換される(Faraj & Johnson, 2011)。

Bruhn et al.(2014)はIT分野のB2Bブランド・コミュニティにおける相互作用関係の形成,発展,持続を説明するためにSETを活用し,B2Bブランド・コミュニティにおけるC2Cインタラクションの質が機能的,経験的,象徴的なブランド・コミュニティのベネフィットに正の影響を与えることを明らかにした。Sethi et al.(2024)も同様の結果を検証している。

Gharib et al.(2017)はコミュニティをその参加者(個人,グループ,企業など)間で資源(情報や知識など)を交換する場として捉え,LinkedIn上のB2Bコミュニティにおいて互恵性と感情的コミットメントが積極的な参加を促す要因であることを検証した。互恵性(reciprocity)とは,過去にコミュニティで誰かに助けられた経験を持つ人がお返しとして他の人に助けを提供する意図のことである。Tsai and Kang(2019)も知識共有における互恵性に着目し,コミュニティで知識を探索する人がどのように互恵性の意図を形成するのかについての研究を行った。知識探索者は,コミュニティから受ける社会的ベネフィット,コミュニティからのサポートを知覚すると,互恵性の意図を形成することを明らかにしている。

2. 社会的認知理論(SCT)

参加行動の個人的要因の研究に適用されている他の理論として,社会的認知理論(Social Cognitive Theory:以後SCTとする)が挙げられる。SCTでは個人は社会的環境において個人の認知に基づく行動を取ると考えられ,理論の中核には自己効力感(self-efficacy)と結果への期待(outcome expectation)がある。自己効力感とは「特定の成果を達成するために必要な行動を計画し,実行する能力に対する信念」であり,結果期待とは「特定の行動を行った場合に起こり得る結果や成果についての個人の信念」である(Bandura, 1997)。知識共有コミュニティにおける自己効力感は「知識自己効力感(knowledge sharing self-efficacy)」として概念化され,プロフェッショナル・コミュニティにおける知識共有の先行要因であることが明らかになっている(Chen & Hung, 2010; Hung et al., 2015; Liao et al., 2013; Sung et al., 2024)。

3. 利用と満足(U&G)フレームワーク

「利用と満足」(Uses and Gratifications:以後U&G)フレームワークも個人の参加動機を明らかにするために使用されるアプローチである。U&Gフレームワークは個人がなぜメディアを利用するのかという動機を説明する。ユーザーは目標志向であり,ニーズに基づいて特定のメディアを選択する。ユーザーの動機づけを説明する次元として,Katz(1959)が提唱したコンテンツ満足とプロセス満足の2つの次元に加え,Stafford et al.(2004)により追加された第3の次元として社会的満足がある(Salehan et al., 2017)。Salehan et al.(2017)はコンテンツ満足の促進要因として,SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)利用者の動機づけを功利的動機づけと快楽的動機づけおよび社会的動機に分けて検証した。その結果,快楽的動機づけ以外の動機づけはSNSにおける共有とコラボレーションに対して正の影響があり,SNSへの参加が個人のパフォーマンスと職業および仕事に関するパフォーマンスに有意に影響することが示された。

Hsieh et al.(2024)は同じくU&Gフレームワークを利用してITプロフェッショナル,ゲーム,旅行それぞれのコミュニティにおける参加動機の比較を行った。旅行コミュニティとゲーム・コミュニティの参加者では娯楽や楽しみなどのプロセス満足が有意となったが,プロフェッショナル・コミュニティ参加者においてはプロセス満足は有意ではなかった。この結果は,ユーザーが専門的なコミュニティに参加するとき,そのコミュニティが面白いか,娯楽を提供しているかにはあまり関心がなく,その代わりに自分の職業に関連する知識やスキルの習得に重点を置いていることを示唆するとしている。

4. 社会関係資本および社会ネットワーク分析

コミュニティ参加行動は個人の内面だけではなく社会的な要素の影響を受ける。参加行動の社会的側面を説明する代表的な理論として,社会関係資本(social capital)の理論が今回レビューを行った文献の多くに活用されていた(Antonacci et al., 2017; Chiu et al., 2006; Rose et al., 2021; Sethi et al., 2024; Wasko & Faraj, 2005; Zhang et al., 2022)。社会関係資本とは,個人や組織が社会的ネットワークや人間関係を通じて得られる資源のことを指す。Nahapiet and Ghoshal(1998)は,社会関係資本を構造的次元,関係的次元,認知的次元の3つの主要な次元で捉え,組織における知識創造において重要な役割を果たすと主張する。

社会関係資本の構造的次元を理解するためのアプローチとして活用されているのが,社会ネットワーク分析(Social Network Analysis:以後SNAとする)におけるネットワーク中心性の考え方である。SNAは個人,集団,組織などの社会的な存在をアクターとして捉え,その相互の関係性を把握・分析するための手法および理論体系である。ネットワークにおけるポジションを示すネットワーク中心性は社会関係資本における尺度の一つであると考えられている(Burt, 2018)。Wasko and Faraj(2005)Nahapiet and Ghoshal(1998)の理論モデルとネットワーク中心性の考え方に基づき,個人の動機づけと社会関係資本がどのように知識貢献を促進するかを検証した。弁護士コミュニティにおいてネットワークの中心にいる人はコミュニティにおける貢献の有用性,貢献度がともに高く,知識共有の最も強い動機は「参加することで自分の職業上の評価が高まる」という認識であることを明らかにした。社会関係資本の考え方によれば,焦点となる行為者(「自我」)の価値ある資源は,自我の社会的ネットワークに埋め込まれており(Nahapiet & Ghoshal, 1998),これには評判も含まれるとされている。

同様にネットワーク中心性に着目した論文としてZhang et al.(2022)Antonacci et al.(2017)Zhao et al.(2018)がある。ネットワーク中心性は,コミュニティの文脈ではある参加者がどれだけ多くのメンバーと繋がり,人気があるかを示す指標として扱われる。Zhao et al.(2018)は,金融取引関連のコミュニティにおいて,より中心的な個人はより多く質問し,より多く回答し,より有益な回答を提供する傾向があることを突き止めた。Antonacci et al.(2017)は,医療関連のコミュニティにおいて,ネットワーク中心性が高い個人がコミュニティ内に存在すると議論が促進され,コミュニティの成長につながることを示した。Zhang et al.(2022)は,EC関連のB2BコミュニティにおいてECベンダー側社員のネットワーク内での中心性が高いことが販売成績への正の影響を媒介することを明らかにした。

Chiu et al.(2006)は,それまでの社会的認知理論に基づく先行研究では社会的ネットワークの影響力の重要性が無視されてきたと指摘する。Chiu et al.(2006)はコミュニティにおける知識共有は個人的認知と社会的ネットワークの両方の観点から取り組まれるべきと考え,社会的認知理論と社会関係資本を統合したモデルを検証した。その結果,社会関係資本の側面である社会的相互作用の絆(social interaction ties),信頼,互恵規範(norm of reciprocity),同一化(identification),共有ビジョン,共有言語がバーチャル・コミュニティにおける個人の量的・質的な知識共有に影響を与えることを明らかにしている。

IV. コミュニティ参加行動の先行要因と結果

これまで見てきたように,B2Bコミュニティにおける参加行動の複雑な要因を解明するために様々な理論を活用した研究が進められている。図2に示すように,文献ではコミュニティ参加を従属変数とする先行要因の研究,コミュニティ参加を独立変数とする結果の研究,またその両者の組み合わせが見られる。本項では,コミュニティ参加を従属変数または独立変数とする定量研究で議論されている先行要因と結果について整理する。

図2

コミュニティ参加行動の先行要因と結果

1. コミュニティ参加行動の先行要因

先行研究では,オンライン・コミュニティへの参加に影響する3つのマクロ要因として,個人的要因,社会的要因,技術的要因が指摘されている(Antonacci et al., 2017; Hung et al., 2015)。これらに加え,今回レビューを行った文献のうちブランド文脈の研究では,ブランドや企業関連の変数を先行要因として研究した文献も存在する(Bruhn et al., 2014; Prashar & Maity, 2024; Rose et al., 2021; Sethi et al., 2024)。それぞれの要因を概括する。

個人的要因:動機,性格,価値観,利用可能な時間,およびその他の個人の特性などのコミュニティメンバーの特性とされる(Antonacci et al., 2017)。ユーザーの動機(Hung et al., 2015; Liao et al., 2013; Salehan et al., 2017; Wasko & Faraj, 2005; Yang et al., 2016),知識自己効力感(Chen & Hung, 2010; Hung et al., 2015; Liao et al., 2013; Liou et al., 2016; Sung et al., 2024),互恵性(Gharib et al., 2017; Hsieh et al., 2024; Hung et al., 2015; Liao et al., 2013; Liou et al., 2016; Wasko & Faraj, 2005)などが挙げられる。

社会的要因:社会的集団のプロセスに関連しており,コミュニティ内での個人の役割や,メンバー間の社会的交流,質問や投稿,回答などの側面を含む(Antonacci et al., 2017)。社会的な絆(Chen, 2007; Chiu et al., 2006; Chompis et al., 2014),信頼(Chen & Hung, 2010; Gharib et al., 2017; Hung et al., 2015),互恵性の規範(Chen & Hung, 2010; Chiu et al., 2006; Liou et al., 2016),社会的アイデンティティ(Chiu et al., 2006; Dholakia et al., 2009; Wang et al., 2016),ネットワーク中心性(Antonacci et al., 2017; Wasko & Faraj, 2005; Zhang et al., 2022; Zhao et al., 2018)など様々な種類の要因が扱われている。

技術的要因:オンライン・コミュニティの技術面やユーザビリティ関連の要因(Antonacci et al., 2017)。情報の品質(Chen, 2007; Chompis et al., 2014; Dholakia et al., 2009; Gharib et al., 2017),システムの品質(Chen, 2007; Chompis et al., 2014; Gharib et al., 2017; Simmons & Clayton, 2010),コミュニティサイトの能力,特性(Dholakia et al., 2009)などが含まれる。

ブランド・企業要因:ブランドまたは企業に関連する要因。ブランド・トラスト(Bruhn et al., 2014; Sethi et al., 2024)などが代表的である。

2. コミュニティへ参加行動の結果

今回レビューした論文では,コミュニティ参加行動そのものを従属変数としてその要因を議論する研究が最も多く見られたが,参加行動の結果に着目した研究も豊富にあり,とりわけブランド・コミュニティ研究においてはブランド関連の従属変数の使用が見られた。これらは個人的成果,コミュニティ成果,そしてブランド・企業成果に大別することができる。

個人的成果:職業上の良い影響や,個人的な幸せ,評判,他者との関係への良い影響(Chiu et al., 2006; Salehan et al., 2017),機能的,社会的ベネフィット(Dholakia et al., 2009; Tsai & Kang, 2019),互酬性(Tsai & Kang, 2019)などが挙げられる。

コミュニティ成果:コミュニティ満足度(Chiu et al., 2011; Chompis et al., 2014; Hogreve & Beierlein, 2023),コミュニティ・コミットメント(Simmons & Clayton, 2010),コミュニティ継続意向(Chen, 2007; Chiu et al., 2011; Hsieh et al., 2024),コミュニティの成長や成果(Antonacci et al., 2017; Chen & Hung, 2010; Chiu et al., 2006)などが扱われている。

ブランド・企業成果:ブランド・ロイヤルティ(Bruhn et al., 2014; Sethi et al., 2024; Simmons & Clayton, 2010),ブランド・コミットメント(Prashar & Maity, 2024),ブランド認知度(Wang et al., 2016),顧客の信頼とロイヤルティ(Rose et al., 2021),営業成績(Zhang et al., 2022)など,コミュニティに関わるブランドまたは企業関連の変数が見られた。

3. 今後の研究課題と考察

本研究ではB2Bブランド・コミュニティとプロフェッショナル・コミュニティにおける参加行動に関連する論文のレビューを行ってきた。コミュニティ参加行動は個人の心理的・社会的要素やコミュニティ,企業に関連する様々な要素が複雑に絡み合う多元的なテーマであることを改めて確認した。最後に今後の研究者が取り組むべき課題について考察する。

1点目は,B2B独自の要素を考慮した理論の適用とモデルの構築である。今回レビューを行った論文の理論的背景は,コミュニティ参加行動を主に個人的要因と社会的要因から理解しようとするものである。だがB2Bコミュニティにおいては多くの個人は特定の企業や組織に所属し業務上の目的を持って参加することから,組織購買行動モデルやグループ・ダイナミクス理論などを適用した組織行動解明のための研究が今後求められると考えられる。

2点目は,B2Bコミュニティ参加動機の解明である。プロフェッショナルを対象としたコミュニティでは快楽主義的動機よりも功利主義的動機が強いと主張されている(Hsieh et al., 2024; Liao et al., 2013)が,実証研究では一貫した結果を示していない。弁護士のコミュニティを対象としたWasko and Faraj(2005)の研究では,功利主義的動機が知識貢献に対して有意の影響があり,快楽主義的動機は有意ではなかったが,Hung et al.(2015)によるIT技術者のコミュニティ研究では逆の結果を示しており,さらなる研究が必要と考えられる。

3点目として,参加の概念の明確化と共通尺度の開発が挙げられる。今回対象となった論文で測定されたコミュニティ参加行動は,サイトへのログインや検索,閲覧や質問および回答の回数や頻度,情報の質など多岐にわたっており,それぞれ独自に定義されていた。今後の研究者が共通して活用できる信頼性の高い参加尺度の開発が求められる。

最後に,本研究がレビューした論文は全て日本以外の国におけるコミュニティを対象とした研究であるため,日本において一般化可能であるかどうかは検証が必要である。

謝辞

本稿の執筆にあたり,慶應義塾大学の山本晶先生より手厚いご指導を賜りました。ここに記して,感謝申し上げます。

References

長橋 明子(ながはし あきこ)

2024年早稲田大学大学院経営管理研究科修了。経営管理修士(専門職)。ITソフトウェア企業勤務。現在,慶應義塾大学大学院商学研究科後期博士課程に在籍。

 
© 2025 The Author(s).

本稿はCC BY-NC-ND 4.0 の条件下で利用可能。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
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