2026 年 46 巻 2 号 p. 128-137
ほとんどの大企業が積極的にSDGsに取り組んでいるにもかかわらず,持続可能性の問題には改善の兆しが見られない。その原因として従来の環境政策の基本的な考え方である効率性アプローチの限界が指摘され,エネルギー・資源の総消費量そのものを抑制する「充足性アプローチ」へのシフトの必要性が指摘されている。また,消費回避的な充足的消費も一部の消費者に見られるようになっている。こうした環境政策や消費の変化にマーケティングも適応する必要がある。本稿では,まず充足性アプローチに大企業が適応することが困難であることを確認する。そして,充足性アプローチを主導することが期待されるBコープの考察から「利益ためのCSR」か「CSRのための利益」かという二者択一が問題であることを指摘する。そして最後に,「CSRのための利益」を前提とする非営利組織のマーケティングの特徴を検討することで,企業のマーケティングはこの二者択一から脱することと,売上以外の収益獲得のためのマーケティングによって充足性アプローチへの移行が可能であることを主張する。