日本企業では,開発とデザインの溝が深く,デザインが企業経営に活かせていないと指摘される。それに対し,AppleやDysonでは,デザインとエンジニアリングを統合し,デザインに優れた製品・サービスを創出している。学術研究においても,デザインの効果的な活用には,デザイン責任者を設置し,全社戦略にデザインを組み込み,部門間調整においてデザイン部門の妥協を減らすこと,が訴えられている。しかし,企業規模によって多様な文化の違いが指摘されているにもかかわらず,上記はそれが考慮されていない。本研究では,まだ議論が不十分である,デザイン責任者が経営参画する組織の特徴を大企業と中小企業別に評価した。その結果,大企業では,ビジョン策定やデザインの社内への浸透を担うデザイン推進組織が設置されている傾向が確認された。一方で中小企業では,製品・サービスのマーケティングに関与するデザイナーとプロトタイプによる議論の活性化とユーザビリティテストにアジャイル型プロセスの開発を導入している傾向が見られた。デザインを活用するためには,組織規模を踏まえ,適切な対策を実施することが求められる。