計量国語学
Online ISSN : 2433-0302
Print ISSN : 0453-4611
2019 年度テーマ特集 実時間データを用いた言語変化研究
言語変化を把握するための継続調査と同一個人追跡調査の関係に関する研究
国立国語研究所実施の鶴岡市調査に見るガ行鼻音衰退の事例
尾崎 喜光
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2019 年 32 巻 2 号 p. 82-95

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抄録
国立国語研究所が山形県鶴岡市において経年調査している項目のうち音声項目の一つであるガ行鼻音の使用者割合について実時間比較を行った.分析の結果,ガ行鼻音は確かにこの間衰退していること,しかしながらコーホート(同時期出生集団)においてはこの間にそれほど大きな変化がないことが確認された.このことから,ガ行鼻音の衰退は主として構成員の入れ替えにより生じたものと推測される.個人の中で変化のあった者は少ないことを確認するため,同一個人を追跡調査したパネル調査のデータについても分析したところ,おおむねそのとおりであることが確認された.しかしながら,同一の生年層について継続調査の経年差とパネル調査の経年差を比較したところ1割程度の違いが認められることがわかった.これは,パネル調査の回答者は言葉についての規範意識が強い人が平均よりも多く含まれていることに起因している可能性が考えられること,それが事実であるとすれば,パネル調査は個人の変化の有無を確実に把握できる点では非常に有用であるが数値的な把握という点では限界がある可能性があることを指摘した.
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© 2019 計量国語学会

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