抄録
本稿では,叙述語を指標に,多変量解析(コレスポンデンス分析,クラスター分析)を用いて平安鎌倉時代の文学作品の文体類型がどのように位置づけられるのかについて検討した.その結果,平安鎌倉時代の文学作品の文体は,物語日記-和文体型,物語日記-漢文訓読文寄りの文体型,紀行文和歌集型,強紀行文和歌集型の4類型に分けられることが明らかになった.さらに,和漢の対立が語彙選択に最も大きく寄与し,次いでジャンル文体が影響することが示された.また,物語日記-和文体型の叙述語がその他の類型と比較して格段に豊富であることも明らかになった.くわえて,所謂「特有語」でなくとも,多くの語に文体的特徴が反映されていることが示された.