抄録
本研究は,1歳〜3歳の子どもと母親の自然発話データを対象に,5対の自他対応動詞(「入る-入れる」「乗る-乗せる」「出る-出す」「壊れる-壊す」「開く-開ける」)に焦点を当て,それぞれの動詞について,初期に獲得される6つの形態素(「る」(非過去),「た」(過去),「て」(命令),「ちゃう」(完成相),「ない」(否定),「ている」(継続相))と組み合わされる頻度を比較した.t検定の結果,自動詞と他動詞の総使用頻度には有意な差がみられないが,4つの形態素(「る」,「た」,「ない」,「ている」)について自動詞の方が有意に高い頻度で使用されていた.この傾向は子どもと母親の双方にみられ,子どもの動詞使用が母親からの入力によって影響を受けていることが示唆される.また,自動詞と他動詞の使用頻度の相関係数が高いことから,自他対応動詞の対の使用頻度における関連性を示した.