抄録
2015年に実施し全国の20歳以上の男女約1万人から回答を得た方言意識Web調査(2015年全国方言意識Web調査)のデータを用い,潜在クラス分析によって話者類型を抽出し,各類型の特徴記述とその解釈を試みた.抽出された七つの話者類型をクラスサイズ降順に示すと,「消極的使い分け派」「積極的方言話者」「積極的使い分け派」「方言育ち共通語話者」「共通語話者」「判断逡巡派1」「判断逡巡派2」となる.帰属確率平均値に着目すると,クラスサイズの大きな主要5類型には,明らかな地域と年代の効果が認められた.地域の効果は現代日本語社会における方言と共通語に対する意識の地域差,年代の効果は戦後日本語社会を構成する話者の意識が,「方言育ち共通語話者」から「共通語話者」「積極的方言話者」へと変遷したことを映すものと解釈する.