抄録
品詞構成に基づいて文体特徴を計量した指標としてMVR(Modifier-Verb Ratio)がよく用いられている.しかし,MVRもしくは品詞構成によってありさまや動きの描写が捉えられるかを実証的に研究したものは少ない.本研究では, MVRおよび品詞構成と文体印象との関係を検討した井関他(2022)の調査データに対して,一般に公開されている言語資源を用いて新たな分析を行った.イメージ性の評価と日本語抽象度辞書ADW-J,展開の早さと述語項構造シソーラスにおける状態変化の有無を対応づけることによって,これらの評価データが一定の収束的妥当性を備えていることを示した.また,追加の分析を通して展開の早さを説明する変数として,品詞構成率に加え,特定の条件を備えた文の数を考慮することの可能性を示唆した.