本論文は,学校教育という特定場面の言語表現において,知識基盤を伝える上で中核的な役割を担う教科書を分析対象とし,概念についての説明を計量するための尺度を導入するとともに,その尺度で学年進行に伴う変化を可視化する.具体的な分析対象として小学5年生から中学2年生までの理科教科書を選び,分析項目として索引語数(異なり用語数),定義表現の数,分類表現の数を採用・導入して分析した結果,索引語数は学年とともに段階的に増加することがわかった.小学校では中学校に比べ,1つの用語あたりに費やされる文数・語数が多いことが明らかになった.また,小学校は中学校に比べ,定義される用語の平均的な割合が明確に低いことが示された.概念に関する明示的な説明である定義表現と分類表現の数は,小学6年生から中学1年生にかけて約4倍に増加する結果となった.