抄録
高齢人口の増加にともない、認知症の早期診断・早期治療が注目される中、MRI を用いた認知症の診断ソフトが無料提供され、当院でも臨床応用している。しかし臨床的な症状とソフトによるZ スコアという数値には、完全な一致は得られず、どこまでこのソフトが有用であるのか基礎実験と臨床例による検討をした。 若年ボランティア6 名による実験では、画質を低下してもZ スコアの変動は0.5 以下であった。 臨床例では、視覚的にみた海馬・海馬傍回の萎縮程度に従い4 群に分けた場合Z スコアの値は、全ての群間で有意差を認めた。長谷川式検査結果とZ スコアの間には多数例では有意な傾向が見られた。 検査後に改めて主治医にアンケートを実施した結果では、正常群と境界群のZ スコアの平均値には有意差を認めた。 認知症の診断ソフトは、海馬・海馬傍回の萎縮を反映した数値を算出していることが再確認された。認知症の診断には、画像診断と臨床情報とを複合して検討する事が肝要である。