抄録
腹膜癌は病理組織学的に進行漿液性卵巣癌と類似していることから,治療は上皮性卵巣癌に準じて行われることが多く,化学療法の奏功率も同等であると考えられている.しかしながら,その治療方針は確立されていない.当院で経験した一症例を提示する.患者は60 歳.腹部膨満感と経口摂取困難を主訴に当院内科を受診.多量の腹水貯留と腹膜播種のため婦人科疾患を疑われ,当科紹介となった.腹膜癌の診断であったが,初回手術完遂は困難と判断したため,化学療法を行ったのちに拡大子宮全摘+両側付属器摘出+骨盤内・傍大動脈リンパ節郭清術を施行できた.病変が広範囲に及ぶ腹膜癌では,術前化学療法(NAC:neoadjuvant chemotherapy)を行うことが有用である可能性が示唆された.