松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
めまいを合併した気管圧迫濾胞癌の1 手術例
野津 長芦田 泰之松井 泰樹吉田 学
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2014 年 18 巻 1 号 p. 47-52

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抄録
76 歳,女性.2013 年1 月めまいで当院耳鼻科受診.3 年前より少し動くだけで脱力あり,脳外科で脳血管造影を受けたが異常なく,胸部X 線で気管の偏位を指摘され、甲状腺腫と甲状腺機能亢進症が判明し,当科紹介となった.受診時,前頚部に硬い6~7cm 大の固定した腫瘍を触知した.頸部リンパ節腫大はなかった.身長151 cm,体重39.0 kg,血圧163/85 mmHg,脈拍100 回/分で眼振はなかった.血液検査ではTSH:0.01μIU/ml,FT3:8.69 pg/ml,FT4:2.56 ng/dl,Tg:12106.0 ng/ml,抗サイログロブリン抗体:84 IU/ml,抗TPO 抗体:249 IU/ml,TRAb:3.4 IU/L,TRAb:38.9%,CEA:3.87 ng/ml,カルシトニン:12 pg/ml と甲状腺機能亢進症を示し,バセドウ病合併腫瘍と考えられた.CT では腫瘍は気管を左方に圧排し,気管も狭窄状態を示していた.動脈造影で右総頚動脈は右外側に偏位し,腫瘍は上甲状腺動脈の血流を受けて染まっていた.プランマー病も考慮しTc シンチを行ったが,腫瘍部位は欠損状態であった.穿刺吸引細胞診ではclass Ⅲで良悪の判定は不能であった.臨床的には悪性腫瘍が考えられたため手術を決定した.手術は前頚部に小さい皮膚切開を置き,正中で甲状腺に到達した.気管は極端に左側偏位していた.左葉より切除を開始し全摘術を施行した.両側反回神経と上喉頭神経は温存した.摘出腫瘍は107 g,70×68 mm で,術後病理診断は甲状腺濾胞癌であった.術後、徐々に気管は正中に復し,めまいも消失した.圧迫症状でめまいを生じた甲状腺濾胞癌の稀な症例を治療する経験を得た.
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