松江市立病院医学雑誌
Online ISSN : 2434-8368
Print ISSN : 1343-0866
緩和ケア病棟看護師の感情労働における感情管理要因の変化
渡部 勇三小西 由紀恵石川 美奈
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2020 年 24 巻 1 号 p. 33-40

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抄録

【目的】緩和ケア病棟の看護師はがん患者との人間関係を構築するために,患者の全人的苦痛を理解し受け止めようと努力しながら患者の看護を行っている.一方,ストレスが増強し看護に対する意欲の低下につながる状況も少なくない.医療や福祉に従事する者には,感情労働といわれる患者や利用者のニーズに合わせて自らの感情をコントロールしながら働く必要性があり,その職務特性が,バーンアウトやメンタル不調のリスク要因として指摘されている.本研究の目的は緩和ケア病棟看護師の感情労働の現状を明らかにし,勉強会とグループディスカッションをすることで感情管理要因がどのように変化するかを明らかにすることである. 【方法】研究デザインはアクションリサーチ法で,研究同意の得られた16名を対象に実施した.勉強会とグループディスカッションの前後にアンケートを実施し,感情管理要因ごとにスコア化しウィルコクソンの符合順位検定を行なった.また,感情管理要因ごとに前後のスコアの変化を求め,緩和ケア病棟経験が1年未満と1年以上の看護師で比較しマンホイットニーのU検定を行なった. 【結果】感情管理要因の「自律性」と「親密性」のスコアは有意に上昇し,合計のスコアも有意に上昇した.前後のスコアの増加を経験1年未満と1年以上で比較し有意差が認められたのは自律性のスコアのみで,他の感情管理要因では経験年数による差は認められなかった. 【結論】感情管理の勉強会やグループディスカッションを行なうことで感情管理への理解が深まり,感情管理要因に変化が認められ,“なぜこのような感情を抱くのか”を意識して感情管理をしながら看護することの重要性が明らかになった.

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