抄録
金属濃縮度の高い部品・素材がどこにあるのかという点に焦点をあてて,製品中に含まれる元素の存在量を詳細に把握する手法と,パソコンを例にしたケーススタディの結果を示した。使用済みパソコン中の元素濃度把握の枠組みとして,素材・部品別に解体し,蛍光X線分析と湿式前処理―多元素同時分析装置を用いて分析し,個別分析値を加算して全量とする方法を採用した。基板のような複合素材は凍結粉砕して金属分析値の精度を向上させた。デスクトップ型パソコン本体の詳細解体―積み上げ法によって得られた1台分に含まれる47元素の濃度を示した。たとえば,Agは794mg,Auは143mg,Pdは186mg,Cuは320g,Pbは20gなどである。デスクトップ型パソコンとノート型パソコンの基板中に含まれる元素を比較し,ノート型パソコン中のAu量は本体重量が少ないにも拘わらず,デスクトップ型パソコンと同程度であるが,Agは1/2,Pdは1/10,Pbは1/7と少なかった。製品中に含まれる金属含有量を正確に把握するためには,分析化学上の課題も残っていることを示した。