抄録
青森・岩手県境における産業廃棄物不法投棄事件は,国内最大級の不法投棄事件として 1999 年に発覚し,両県別々に原状回復 ( 支障の除去 ) 計画を実施している。産業廃棄物の全量撤去は両県ともに 2013 年度に完了したが, 1,4- ジオキサンを主体とした地下水・土壌汚染が残留しており,両県の事業は今なお継続している。不法投棄現場は一体でありながら,原状回復をめぐってはさまざまな考え方が提示され,両県独自の事業となっている。本稿では両県の行政対応の紆余曲折を含めた経緯について,両県の当初計画が環境大臣の同意を得るまでを取りまとめた。産廃特措法にかかわる国の支援が 2022 年度で終わることから,事業の終了を両県同時に行うには両県の事業推進の努力とともに,細やかな意思の疎通と協力体制の構築が必要である。