廃棄物資源循環学会誌
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30 巻, 2 号
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巻頭言
特集:プラスチック資源循環戦略
  • 金子 浩明
    2019 年30 巻2 号 p. 91-97
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー
    プラスチック資源循環戦略は,2018 年 8 月から中央環境審議会で検討が進められてきた。プラスチックという素材に着目して資源循環を徹底することで,資源効率性,海洋プラスチックごみ問題,地球温暖化問題,中国に端を発するアジア諸国の輸入制限等,世界的にも重要性が高まっているこれらの課題に対処し,持続可能な社会の実現に向けたわが国の方向性を示すものである。 「3R + Renewable」 ( 3R の徹底と再生可能資源への代替 ) を基本原則とし,レジ袋有料化義務化等の対策を位置づけ,目指すべき方向性として 3R やバイオマスプラスチックの導入に関する野心的なマイルストーンを掲げた内容で 3 月中に中央環境審議会から答申される。今後,この答申を踏まえて,2019 年 6 月の G20 までに政府としてプラスチック資源循環戦略を策定し,その後,戦略に基づき,速やかに具体的な施策を進めていくことになる。
  • 大野 慶
    2019 年30 巻2 号 p. 98-105
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー
    プラスチックによる環境汚染は,国際的に対応すべき緊急課題である。国連環境計画 ( UNEP ) は国連環境総会 ( 2014 年から 3 回開催 ) において,海洋ごみおよびマイクロプラスチックに関する決議を採択し,科学的知見を収集した報告書の取りまとめ,既存の国際的・地域的なプラスチック対策に関する戦略や規制の有効性評価等の検討を重ねている。また,バーゼル条約では,第 14 回締約国会議 ( 2019 年 5 月開催予定 ) において,附属書改正により規制対象の明確化が図られる見込みである。このほか,プラスチック廃棄物に関するパートナーシップの設立,途上国や新興国におけるプラスチック対策のための資金・技術支援,関連する国際機関や地域協定等との協力・調整体制の強化,市民の意識向上・教育・情報の共有,技術ガイドラインの作成,プラスチック対策に関する具体的な数値目標の設定,政策の効果測定に必要な情報収集,技術革新・研究開発や科学的知見の収集への支援等が検討される。
  • 石川 雅紀
    2019 年30 巻2 号 p. 106-114
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー
    海洋プラスチックごみ問題では,動的側面,国際的側面,問題・対策の多様性が重要であり,対策を考える上では,原因となる製品を A) 通常の使用状況でマイクロプラスチックとして排出する製品 ( 長寿命製品・短寿命製品 ),B) 散乱・不法投棄された後,その後マイクロプラスチック化する製品,C) 海洋に直接流出し,その後マイクロプラスチック化する製品に分類することを提案した。
     対策の方向性としては,周辺途上国への日本の廃棄物管理制度確立の経験,技術,ノウハウ等の提供,支援,および,浮遊ごみの回収,および A) 群の製品 ( 歯磨き粉,洗顔料,タイヤ,人工芝,ドアマット等 ) に対する対策である。これらの製品の場合は,廃棄物問題として捉えられてこなかった問題であり,ただちに調査・研究するとともに,フローを抑制する対策が必要である。C) 群の漁具については,プラスチック使用量,排出量,産業廃棄物としての処理量等,基本的な情報がまったくなく,現状の把握が喫緊の課題であり,早急に調査を進めることが必要である。
  • ――容器包装プラスチックを中心として――
    大塚 直
    2019 年30 巻2 号 p. 115-122
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー
    近時,プラスチックの循環管理に関して,海洋プラスチック汚染,中国等の使用済みプラ輸入禁止という問題が発生した。今日,プラスチック資源戦略を展開する際には,2 つの視点が必要である。第 1 に,① 資源管理,② 温暖化,③ 海洋汚染の 3 つの課題があり,これらに対する対策は,重なる部分と,そうでない部分があるが,これらを総合的に扱う必要があることである。第 2 は,海洋汚染との関係でも,① マイクロビーズ,② 廃棄後マイクロ化するプラスチック ( レジ袋等 ),③ 漁具のように海上で意図的に投棄される廃棄物,④ 非意図的に排出される人工芝,タイヤの摩耗物等に分けた対応が必要なことである。
     そして,今般,上記の 3 つの課題が問題となる中,プラスチックについて容器包装に特化した議論を継続しにくくなっている。仮にプラスチックに関する 3R 法が制定されるときは,物品の種類に着目した個別法とは異なる,素材に着目した横断的な法律となろう。
  • 吉田 正俊
    2019 年30 巻2 号 p. 123-130
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー
    2018 年度,第四次循環型社会形成推進基本計画やプラスチック資源循環戦略 (案) に将来年度のバイオマスプラスチック導入目標が盛り込まれるなど,この 1 年間でバイオプラスチックを取り巻く潮流が大きく変化している。
     本稿では,バイオマス由来のプラスチック,いわゆるバイオマスプラスチック,さらには生分解性プラスチックを含むバイオプラスチックの現状を理解するために,バイオプラスチックに関する国内外の政策動向,バイオプラスチックの原料と製法,世界および日本における主なバイオプラスチックの生産・普及状況,現在開発が進められている新たなバイオプラスチック,バイオプラスチックの普及に向けた課題と対策の方向性について解説する。
  • 酒井 伸一
    2019 年30 巻2 号 p. 131-140
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー
    プラスチック素材の発見から 1 世紀,本格的な素材利用からわずか半世紀あまりで,海洋のマイクロプラスチック問題や温室効果ガス問題に直面した世界は,さまざまな国際機関でプラスチック素材の使用と循環のあり方を本格的に再検討しつつある。そうした現状で,本論では発生抑制・再使用・再生利用という 3R に,再生可能資源利用 (Renewable) と回収 (Recovery) を加えた「3R プラス」原則を考えてみた。3R の観点に加えて,再生可能資源利用に徐々にシフトしていくこととエネルギー回収と環境に排出されるプラスチック回収も考えねばならない。そして,「3R プラス」のもとでの対策事例として,レジ袋の有料化制度の実施に取り組み,その効果を確認した京都市の事例を紹介,使用枚数半減の効果は期待できることを示した。また,バイオプラスチック素材への取り組みの考え方とそのライフサイクル解析事例も併せて紹介し,ライフサイクルベースでの温室効果ガス量の削減が期待できる例もみられていることを報告した。
解説
  • 颯田 尚哉, 石川 奈緒
    2019 年30 巻2 号 p. 141-150
    発行日: 2019/03/30
    公開日: 2020/04/28
    ジャーナル フリー
    青森・岩手県境における産業廃棄物不法投棄事件は,国内最大級の不法投棄事件として 1999 年に発覚し,両県別々に原状回復 ( 支障の除去 ) 計画を実施している。産業廃棄物の全量撤去は両県ともに 2013 年度に完了したが, 1,4- ジオキサンを主体とした地下水・土壌汚染が残留しており,両県の事業は今なお継続している。不法投棄現場は一体でありながら,原状回復をめぐってはさまざまな考え方が提示され,両県独自の事業となっている。本稿では両県の行政対応の紆余曲折を含めた経緯について,両県の当初計画が環境大臣の同意を得るまでを取りまとめた。産廃特措法にかかわる国の支援が 2022 年度で終わることから,事業の終了を両県同時に行うには両県の事業推進の努力とともに,細やかな意思の疎通と協力体制の構築が必要である。
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