廃棄物資源循環学会誌
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特集:生体異物の代謝から見通す化学物質との共存と棲み分け
AhR
――「宿主−環境」相互作用を担う化学物質センサー――
川尻 要
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2019 年 30 巻 3 号 p. 168-178

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抄録
芳香族炭化水素受容体 (AhR) は 「内・外」 環境,および 「腸内細菌」 との境界に位置し,「内」・「外」 環境の低分子化学物質や 「腸内細菌」 の産生物を刺激として 「内」 環境応答系に伝達する重要な化学物質センサーである。AhR は芳香族炭化水素類やダイオキシン類と結合して異物代謝酵素誘導や発がん,ダイオキシン類の毒性発現に関与する受容体として認識されてきた。近年,AhR は食物,細胞,共生微生物などに由来する代謝産物をリガンドとして,免疫や幹細胞制御,細胞分化などの生命活動に関与して生体防御や恒常性維持に働くことが明白になった。AhR シグナル経路は細胞内で多くの情報伝達経路と相互に作用しており,AhR に強い親和性と体内蓄積性をもつダイオキシンが介入することによって多様な疾患を誘発する。包括的な AhR の生理的機能とそれに関与するアゴニスト・アンタゴニストの同定によって,AhR がヒト疾患に対する治療標的として重要な役割をはたすことが期待される。
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© 2019 一般社団法人 廃棄物資源循環学会
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