抄録
本稿では国内外の既存研究に基づき,家庭の食品ロスにかかわる消費者の意識や行動の実態や,ロス削減を目的とした介入の効果について論じた。
消費者は食品ロスを環境問題や食料問題としてよりも,倫理問題,家計の節約という視点で気にかけており,ロスを自分の責任と捉え,すでに削減に取り組んでいると考える人は多い。しかしロス発生には食品の調達から処分までの長いプロセスにおけるさまざまな行動が関係しており,実際には消費者が自覚している以上に多くのロスが生まれている。
一方向の情報提供型の介入のロス削減効果は疑問視されているが,コミュニケーション,フィードバック,プロンプト,ロス削減を支援するツール等の手法を用いた介入では効果が報告されている。ただし実施された介入の中のどの要素が効果を生みだしたのかは明確でなく,長期的に効果が続くのかも明らかでない。また効果がみられた介入を実社会で展開する方法も合わせて考える必要がある。