本稿では,日本のフードサプライチェーン (FSC) における返品慣行の問題,そして外食産業の食品ロスの 3 分の 2 を占める食べ残しの持ち帰りである 「ドギーバッグ」 の問題を取りあげ,過度なリスク回避行動から適切なリスクシェアリングへ行動変容を促す施策の実態を明らかにする。
世界各国では,食品ロス発生抑制に関する立法を契機に,行政が調整しながら具体的な方法が検討されている。しかし,多くの場合は法律が施行されるよりはるか以前から,自発的に方法が模索されており,あくまでも立法はその後押しに過ぎない。
日本では,諸外国と比べると強い罰則規定がある食品リサイクル法が 2001 年に施行された。しかし,その対象は事業系に限定され,かつ農業部門は除外されていた。2019 年に施行された食品ロス削減推進法は,リサイクル法が対象としていない領域を補完し,ソフトロー (Soft Law) によるリスクシェアリングを促す効果が期待される。
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