廃棄物資源循環学会誌
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31 巻, 4 号
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巻頭言
特集:食品ロス半減に向けて
  • ―― SDG ターゲット 12.3 を中心に――
    渡辺 浩平
    2020 年 31 巻 4 号 p. 232-243
    発行日: 2020/08/17
    公開日: 2021/08/01
    ジャーナル フリー
    SDG ターゲット 12.3 は 「小売・消費段階の一人あたりの food waste を半減させ,生産・サプライチェーンの food loss を減少させる」 としているが,その food waste / food loss の定義や指標の設定についての動向を説明した。家庭系の food waste については組成調査により把握することが薦められているが,国際的に適用可能な方法の開発についての筆者らの取り組みを紹介した。また,食料の供給消費のすべての段階を横断した食料廃棄の総量を推計する一つの方法として,食料需給統計や栄養調査の結果を用いたものがあるが,筆者による日本における時系列データの分析や,他の研究者による類似のアプローチによる研究の結果を提示した。
  • 杉田 敬一
    2020 年 31 巻 4 号 p. 244-252
    発行日: 2020/08/17
    公開日: 2021/08/01
    ジャーナル フリー
    食品ロスの削減は世界的にも重要な課題である。わが国においても,「2000 年度比で 2030 年度までに食品ロス量を半減する」 という目標を家庭系・事業系それぞれにおいて設定している。食品ロス削減を国民運動として推進していくため 2019 年 10 月 1 日には 「食品ロスの削減の推進に関する法律」 が施行された。本稿では,法律や基本方針の概要,食品ロス削減に向けた取り組みについて紹介する。
  • ――意識・行動の実態と行動変容のための介入――
    野々村 真希
    2020 年 31 巻 4 号 p. 253-261
    発行日: 2020/08/17
    公開日: 2021/08/01
    ジャーナル フリー
    本稿では国内外の既存研究に基づき,家庭の食品ロスにかかわる消費者の意識や行動の実態や,ロス削減を目的とした介入の効果について論じた。
     消費者は食品ロスを環境問題や食料問題としてよりも,倫理問題,家計の節約という視点で気にかけており,ロスを自分の責任と捉え,すでに削減に取り組んでいると考える人は多い。しかしロス発生には食品の調達から処分までの長いプロセスにおけるさまざまな行動が関係しており,実際には消費者が自覚している以上に多くのロスが生まれている。
     一方向の情報提供型の介入のロス削減効果は疑問視されているが,コミュニケーション,フィードバック,プロンプト,ロス削減を支援するツール等の手法を用いた介入では効果が報告されている。ただし実施された介入の中のどの要素が効果を生みだしたのかは明確でなく,長期的に効果が続くのかも明らかでない。また効果がみられた介入を実社会で展開する方法も合わせて考える必要がある。
  • 山川 肇
    2020 年 31 巻 4 号 p. 262-272
    発行日: 2020/08/17
    公開日: 2021/08/01
    ジャーナル フリー
    本稿では,いくつかの社会実験や政策を参考にしながら,家庭系食品ロスの発生抑制施策の展開可能性について考察した。初めにごみ減量施策の設計に貢献しうる 21 の介入タイプを例示した。次に家庭系食品ロスの発生抑制施策のターゲット行動の候補として 25 の行動をあげ,それらの食品ロス削減可能性について検討した。その結果,在庫使い切り行動を主要なターゲット行動候補として提示した。次いでその促進施策を検討したところ,週 1 回の冷蔵庫整理を促すキャンペーンが効果的であると期待された。キャンペーンで必要とされる取り組みについても論じた。その効果検証が今後の課題である。その他,家庭系食品ロス削減を目的とした有料化や料金改定の可能性について考察した。キャンペーン・デザインについては,英国 WRAP の取り組みを先進事例として紹介した。最後に国への期待として行動インサイトチームの組織化等について述べた。
  • ――40年間の変化および最新動向――
    浅利 美鈴, 矢野 順也, 酒井 伸一, 長谷川 一樹, 小泉 春洋, 高月 紘, 中村 一夫
    2020 年 31 巻 4 号 p. 273-284
    発行日: 2020/08/17
    公開日: 2021/08/01
    ジャーナル フリー
    京都市においては,京都大学と協働して,1980 年から 40 年以上にわたり,家庭ごみの細組成調査が続けられている。継続性と,詳細な調査項目の点において,世界でも類をみない調査といえる。中でも,食品ごみや食品ロスは,重要なごみ削減対象品目と認識され,詳細な分類に加え,期限表示別や袋別計量による排出傾向や出現率の把握も試みてきた。事業系についても,2007 年度以降,数回,類似手法にて細組成調査が行われてきた。
     これらの結果として,家庭ごみおよび事業ごみの両方において食品ごみは重量ベースで約 4 割と最も多くを占めること,減量傾向にあるものの,食品ロスをピーク時から半減するという目標には届いていないこと,さまざまな理由により多くの家庭から出てくると考えられることから,さまざまな削減方策を検討する必要があることなど,政策や消費者教育に多くの知見を提供してきた。適宜改善を加えながら,今後も関係者の協働体制を維持することが重要である。
  • ――フードサプライチェーンの関係性に注目して――
    小林 富雄
    2020 年 31 巻 4 号 p. 285-293
    発行日: 2020/08/17
    公開日: 2021/08/01
    ジャーナル フリー
    本稿では,日本のフードサプライチェーン (FSC) における返品慣行の問題,そして外食産業の食品ロスの 3 分の 2 を占める食べ残しの持ち帰りである 「ドギーバッグ」 の問題を取りあげ,過度なリスク回避行動から適切なリスクシェアリングへ行動変容を促す施策の実態を明らかにする。
     世界各国では,食品ロス発生抑制に関する立法を契機に,行政が調整しながら具体的な方法が検討されている。しかし,多くの場合は法律が施行されるよりはるか以前から,自発的に方法が模索されており,あくまでも立法はその後押しに過ぎない。
     日本では,諸外国と比べると強い罰則規定がある食品リサイクル法が 2001 年に施行された。しかし,その対象は事業系に限定され,かつ農業部門は除外されていた。2019 年に施行された食品ロス削減推進法は,リサイクル法が対象としていない領域を補完し,ソフトロー (Soft Law) によるリスクシェアリングを促す効果が期待される。
  • ――生活困窮者支援の立場から――
    佐藤 順子
    2020 年 31 巻 4 号 p. 294-300
    発行日: 2020/08/17
    公開日: 2021/08/01
    ジャーナル フリー
    本稿はフードバンクによる食料支援にはどのような意義があるかについて考察することを目的としたものである。フードバンクは生活困窮者支援においてインフォーマル・サービスとして位置づけられている。社会保障制度ではフォーマル・サービスとしての所得保障が重要でありつつも,フードバンクによる食料支援は,生活困窮者支援団体との連携によって,所得保障を補完し,同時に所得保障に橋渡しをする役割を担っている。フードバンクが困窮者支援の役割を果たすためには,国および自治体による恒常的な支援が今後さらに必要となってくると考える。
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