廃棄物資源循環学会誌
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特集:アスベスト問題の現状と課題
大気環境中アスベスト曝露による健康影響に関する疫学的知見
蓮沼 英樹島 正之
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2020 年 31 巻 5 号 p. 366-373

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抄録
アスベストは,建材,断熱材等に広く利用されてきたが,石綿肺,肺がん,中皮腫等の健康被害の原因となる。従来は高濃度のアスベストに曝露した労働者の問題と考えられていたが,近年は非職業性曝露によっても健康被害が生じることが報告されている。わが国では,兵庫県尼崎市でかつてアスベストを取り扱っていた工場の近隣住民の中皮腫発症リスクが高いことが見出されており,全国的な将来推計でも大気中アスベスト曝露による中皮腫死亡数の増加が予測されている。オーストラリア,韓国,イタリア等においても,アスベストが使用された建物内での受動曝露や建物からの飛散等の非職業性アスベスト曝露による中皮腫患者が増加傾向にあることが報告されており,アメリカでは同時多発テロ事件でのアスベスト飛散による住民の健康リスクが懸念されている。建築物の解体等に伴うアスベスト飛散を防止し,健康被害が未然に防止されることを期待したい。
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© 2020 一般社団法人 廃棄物資源循環学会
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