廃棄物資源循環学会誌
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31 巻, 5 号
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巻頭言
特集:アスベスト問題の現状と課題
  • 石山 豊
    2020 年31 巻5 号 p. 317-323
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
    環境省では,2005 年度から毎年,アスベスト (石綿) 濃度の調査を実施している。発生源周辺地域およびバックグラウンド地域それぞれの継続調査地域では,近年はすべての地域区分で総繊維数濃度の幾何平均値は 1 本 / L を下回っており,低い水準で推移しているといえる。
     また,建築物等の解体等工事に係る石綿飛散防止を徹底するため,大気汚染防止法の一部を改正し,石綿含有成形板等を含めたすべての石綿含有建材を規制対象とするための規定の整備,事前調査から作業結果の報告までの一連の規制の強化等を実施した。
  • 外山 尚紀
    2020 年31 巻5 号 p. 324-332
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
    「最悪の産業殺人者 (Worst Industrial Killer)」 と呼ばれる石綿 (アスベスト) は,100 年以上前から被害を発生させてきた 「古典的」 な発がん物質だが,現在でも労働衛生上の最大の脅威であるだけでなく,一般環境と建物内の環境にとっても重大な脅威となっている。2020 年,石綿を規制する 2 つの重要な法規である大気汚染防止法と石綿障害予防規則が改正された。建物の調査と石綿の分析を行う者の要件を定めるなど,基本的に規制強化といえるが,諸外国と比較して不十分な点も多く残されている。本稿では,石綿の被害の特徴に着目し,過去と現在の規制を概括し,これからの石綿対策について考察する。
  • 小坂 浩, 小出 信幸, 伴丈 修
    2020 年31 巻5 号 p. 333-344
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
    アスベストのリスク評価を述べたのち,主に環境省のアスベストモニタリングマニュアルを概説した。 2010 年以前はクリソタイルのみ,それ以降は総繊維を測定対象としており,データ評価には注意を要する。最新 (2017 年) の測定方法は,位相差顕微鏡法による総繊維数の計数および総繊維 1 f/L 以上の場合電子顕微鏡法による同定・計数である。解体現場等の迅速測定法として位相差/偏光顕微鏡法および位相差/蛍光顕微鏡法が,また石綿除去工事の管理・監視の目的でオンサイトのリアルタイム測定も採用されている。過去 10 年間のアスベスト濃度調査の結果から,旧石綿製造工場周辺でのクリソタイルが 1 f/L 以上観測されていること,解体現場等や破砕施設では,総繊維数 1 f/L 以上でアスベスト繊維が確認された事例が多いことが注目される。事業者による管理の徹底および自治体による監視が必要であろう。繊維計数は目を検出器とする特殊な測定であるため,日常的な計数管理および第三者機関による精度管理の必要性も述べた。
  • 黒田 章夫, 石田 丈典, 西村 智基
    2020 年31 巻5 号 p. 345-351
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
    大気中に浮遊するアスベスト微細繊維の検出には位相差顕微鏡と電子顕微鏡を組み合わせた方法が使われる。しかしこの方法は時間がかかり,高度な技術とともに大型の装置を必要とすることから,解体現場でのアスベスト検出には適さない。著者らは,アスベストを選択的に光らせる蛍光試薬を利用した蛍光顕微鏡法の開発を行ってきた。蛍光顕微鏡法による測定と,電子顕微鏡法による測定を実施して比較した結果,両方法による測定結果は高い相関性を示すことがわかった。2017 年,本方法は解体現場におけるアスベスト漏洩の検査法として,環境省アスベストモニタリングマニュアルに掲載された。また一方,現場での蛍光顕微鏡法の利用を進めるために,野外での利用に耐えうるような可搬型蛍光顕微鏡を開発した。本装置と大気サンプリング/染色装置を利用した蛍光顕微鏡法は,解体現場で1時間以内に結果を出すことができる。著者らは現在,人工知能を搭載したアスベスト繊維解析ソフトウェアを利用して蛍光顕微鏡法の完全自動化を行っている。
  • 山本 貴士
    2020 年31 巻5 号 p. 352-357
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
    アスベストに対する規制は段階的に強化され,今世紀に入って製造や使用の全面禁止がなされたことから,今後は建築物の解体等に伴い発生するアスベスト廃棄物を,作業従事者の健康被害や環境放出を回避しつつ適正に処理することが重要である。本稿では,アスベスト廃棄物に係る規制,アスベスト廃棄物の発生の状況,無害化処理技術の研究開発動向について概観し,今後のアスベスト廃棄物処理の方向性について考える。
  • 本山 幸嘉
    2020 年31 巻5 号 p. 358-365
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
    今回の大気汚染防止法・石綿障害予防規則の改正案は,規制の不十分な点をさらに強化するために提出された。その内容は,石綿含有成形板等のレベル 3 建材への法規制対象拡大,解体前の事前調査を確実に行わせるための事前調査方法の法定化および解体等の作業基準違反に対する直接罰の導入等である。
     そのような中で事前調査を網羅的に行う。つまり見落とすことなく石綿含有建材・無含有建材の判断根拠と同一の範囲の明確化することが義務付けられたということである。(一社)日本アスベスト調査診断協会のSRD調査手法をベースに事前調査の難しさと問題点を考える。
  • 蓮沼 英樹, 島 正之
    2020 年31 巻5 号 p. 366-373
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
    アスベストは,建材,断熱材等に広く利用されてきたが,石綿肺,肺がん,中皮腫等の健康被害の原因となる。従来は高濃度のアスベストに曝露した労働者の問題と考えられていたが,近年は非職業性曝露によっても健康被害が生じることが報告されている。わが国では,兵庫県尼崎市でかつてアスベストを取り扱っていた工場の近隣住民の中皮腫発症リスクが高いことが見出されており,全国的な将来推計でも大気中アスベスト曝露による中皮腫死亡数の増加が予測されている。オーストラリア,韓国,イタリア等においても,アスベストが使用された建物内での受動曝露や建物からの飛散等の非職業性アスベスト曝露による中皮腫患者が増加傾向にあることが報告されており,アメリカでは同時多発テロ事件でのアスベスト飛散による住民の健康リスクが懸念されている。建築物の解体等に伴うアスベスト飛散を防止し,健康被害が未然に防止されることを期待したい。
  • ――大気汚染防止法2020年改正を中心に――
    大塚 直
    2020 年31 巻5 号 p. 374-384
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
    解体等工事における石綿飛散防止に関する大気汚染防止法 2020 年改正の特徴は,①すべての建材を規制対象にしたこと,②解体等工事前の石綿使用の有無の調査について,元請業者にその結果を都道府県に報告し,調査記録を作成・保存することを義務付けたこと,③石綿含有建材の除去作業完了時に,元請業者が発注者に報告し,また,作業に関する記録を作成・保存するよう義務付けたこと,④短期の解体工事が多く,作業基準違反に対して基準遵守適合命令を出すのは極めて困難なことから,一定の作業基準違反行為に対して直罰を創設したこと,にある。
     隔離場所周辺での大気濃度測定の義務付けについては,測定結果が出るまでに 5 ~ 7 日かかること,石綿繊維濃度測定に使用される走査型電子顕微鏡が十分普及しておらず,総繊維数濃度を用いるのは合理的とはいいがたいこと,測定の結果基準を超えた場合の扱いが不明であることなどから,導入できず,残された課題とされた。
環境省・廃棄物資源循環学会共催シンポジウム報告
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