日本食品工業学会誌
Print ISSN : 0029-0394
そ菜の冷凍貯蔵中の有機酸の生成
榊原 庄二島川 順二今関 英雄瓜谷 郁三
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1965 年 12 巻 2 号 p. 39-43

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抄録

そ菜を生で凍結貯蔵した場合に起こる種々の変化のうち,有機酸の生成についてキヌサヤおよびインゲンについて検討した結果,
(1) キヌサヤ,インゲンのいずれにおいても生凍結品はブランチング後凍結したものに比して酸度が増加し,キヌサヤでは揮発性酸の増加が顕著であるのに対してインゲンでは不揮発性酸の増加が顕著であることがわかった。
(2) 上述の揮発性酸および不揮発性酸について,それぞれペーパークロマトグラフィーを行なった結果,揮発性酸として酢酸を不揮発性酸としてはクエン酸,リンゴ酸,フマール酸,コハク酸が見い出された。これらの各種の酸はキヌサヤおよびインゲンのいずれにも見い出された。
(3) 不揮発性酸をケイ酸カラムで分画後,ペーパークロマトグラフィーによる定性を行ない,また誘導体に導いて酸の確認を行なった。いっぽうキヌサヤの揮発性酸部についても誘導体の合成を行なった。その結果不揮発性酸としてはキヌサヤ,インゲンのいずれにおいてもリンゴ酸およびフマール酸が大部分を占めており,またコハク酸もかなりあるが,クエン酸は少量であることがわかった。なおキヌサヤでは酢酸,コハク酸,リン酸,クエン酸が,インゲンでは,フマール酸およびリンゴ酸がそれぞれ確認された。
(4) これらの有機酸の生成は,冷凍により呼吸酵素系の阻害が起こるが,解糖作用系やTCAサイクル中の酵素がそれほど阻害されないためと思われる。

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