抄録
本稿の目的は,シンガポールの数学教育の動向を調査することである。小学校算数科の教科書の内容を調査することと,筆者が2ヶ月間にわたってシンガポールの教育研究の拠点である NIE (National Institute of Education in Singapore)に在籍した経験を踏まえて,検討を行った。その結果,明らかになったことは次の通りである。数学の思考力を育成する視点が各領域を通して重点化され,大幅な紙面を割いてそれらが解説されている。数学の現実事象への応用はある程度意識されつつも,常に数学の内容の深化を意識した配置構成となっている。近年の国際的な学力調査に影響を受けた日本の算数・数学教育の現実事象への適用に関する扱いは,数学の思考力の育成の観点から再検討する余地がある。