2011 年 62 巻 2 号 p. 85-92
ハマダラカ類のMark-release-recapture実験を1995年10月と11月に北部タイで実施した.1回目の実験では12種3,744雌を捕獲し,蛍光塗料で着色した後に放逐して飛翔距離を調べた.放逐された蚊の再捕獲は放逐場所からの距離が異なる5 ヶ所(60 mから2,700 m)で水牛と人囮によって放逐後連続4日間実施した.主要なハマダラカ5種の再捕獲率は0.72~1.23%であった.優占種のAn. aconitus の再捕獲率は0.92%で,このうち3個体が2,700 m離れた採集場所で再捕獲された.2回目の実験では,11種9,374雌を放逐し連続した6日間の再捕獲を行って,An. aconitus の日当たり生存率を推定するとともに,他種ハマダラカの飛翔距離を再度調べた.An. aconitus の再捕獲率は1.46%で,本種を含む4種ハマダラカの10雌が2,700m離れた採集場所で再捕獲された.An. aconitus の日当たり生存率を2種類の方法で推定したところ,0.618および0.624であった.人囮と牛囮で再捕獲された個体数の比を求め,人嗜好性の程度を評価した.