Terasakiらがリンパ球ダイレクトクロスマッチテスト陽性症例の移植腎生着率が有意に悪いことを報告して以来40年弱の時が経過しようとしている. これ以降クロスマッチ陽性例を腎移植適応としないことにより, いわゆる超急性拒絶反応の発生は大幅に減少したことが報告された. その後, 強力な免疫抑制剤, タクロリムスやミコフェノール酸モフェチルなどのため細胞性拒絶反応は激減し, 拒絶反応といえば抗体関連拒絶反応が目立つようになった. さらにこの時期, 抗HLA抗体の検出キットが開発され検査が行いやすくなったこともあり, 抗HLA抗体の腎移植における役割がより明確になってきたのである. 抗HLA抗体陽性例, 特にドナー特異的抗体を持つ症例では移植腎の予後が有意に悪いことが明らかにされつつある. 「まえがき」1969年Terasakiらがリンパ球ダイレクトクロスマッチテスト(compliment-dependent cytotoxic crossmatch test, 以下CDCと略する)陽性症例の移植腎生着率が有意に悪いことを報告して以来40年弱の時が経過しようとしている.