「はじめに」 癌細胞にのみ発現する抗原を免疫することにより, 癌細胞を攻撃して破壊するT細胞を誘導する免疫療法を確立するために, 様々な癌抗原ワクチンの開発が試みられている. 従来, 正常組織に発現を認めず癌細胞に特異的に高発現する癌抗原を同定することは困難であったが, cDNAマイクロアレイ解析による癌組織と正常組織におけるゲノムワイドの遺伝子発現プロフィール解析により, 癌特異抗原の同定が飛躍的に進んだ. 我々は, この手法を用いて多数の癌特異抗原を同定し, これを用いた癌免疫療法の臨床試験を開始している. 本稿では, 肝細胞癌に高発現する新規癌胎児性抗原であるGlypican-3(GPC3)の発見と, GPC3由来のHLA-A2およびHLA-A24により細胞傷害性(キラー)T細胞に提示されるペプチドを用いた, 癌免疫療法の開発について紹介する. 樹状細胞は, T細胞の活性化において必須の役割を果たしているプロフェッショナル抗原提示細胞である.