2025 年 68 巻 p. 57-65
口腔の健康と全身の健康が密接に関係していることが報告されていることから,歯の健康管理は全身の健康管理の一環となっている。しかしながら,高齢化が進む国内では,歯周病の患者数が増加している状況にある。歯周病には,歯周組織に形成される口腔バイオフィルムが深く関与していることが広く認識されている。歯周病予防には口腔バイオフィルムの形成および再形成を防ぐことが重要であり,バイオフィルムの薬剤抵抗性や再形成の機構を踏まえた有用性の高い素材の開発が求められる。そこでバイオフィルムへの高い浸透性を有し,歯周病予防に効果的なイソプロピルメチルフェノール(IPMP)封入ポリ乳酸・グリコール酸(PLGA)ナノ粒子(NP)の開発を行った。IPMP封入PLGA NPを用いた臨床試験において,口腔内の菌数の減少,歯周組織の潜血の減少,口臭の改善が認められた。以上の結果から,IPMP封入PLGA NPはバイオフィルムの形成抑制に有効であると考えられる。