1997 年 46 巻 2 号 p. 95-102
ヤクミルクと5種類のネパールのチーズを試料とした。純粋種のヤクのミルクは黄金色で,脂肪は7~10%, 総固形分は19.3%,タンパク質は5.5%,その中でβ-ラクトグロブリンは0.8%, α-ラクトアルブミンは0.3%であった。高地(2000 m以上)で作られたヤクチーズは,熟成指標26.94で官能的に良好な品質であった。カトマンズで購入したヤクチーズは,高い熟成指標(34.80)を示し, いくらか腐敗臭を呈した。ヤクチーズのタンパク質含量は36%で日本で製造したゴーダーチーズのそれ(26.5%)よりも高い。120日熟成したヤクチーズとチュルピおよびゴーダーチーズの走査電子顕微鏡観察はそれぞれ異なった微細構造を示した。チュルピはカゼインーリン酸カルシウムの結晶が多く観察され, 緻密な構造をしていた。ゴーダーチーズは, ヤクチーズよりもタンパク質マトリックスのスポンジ状構造が明瞭で,リン酸カルシウムの結晶も少なかった。