ミルクサイエンス
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原著論文
線虫におけるBifidobacterium longum BB536による酸化ストレス耐性を誘導するシグナル伝達を介した抗老化作用
戸田 一弥原 早紀子密山 恵梨小田巻 俊孝吉本 真清水 金忠
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2021 年 70 巻 1 号 p. 3-13

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抄録

 ビフィズス菌は保健効果に関する臨床報告が多数存在するプロバイオティクスであり,乳製品によく用いられる。本研究では,Bifidobacterium longum subsp. longum BB536の抗老化作用について線虫(Caenorhabditis elegans)を用いて検証した。野生株,遺伝子変異株,パラコート誘導性ミトコンドリア機能障害モデルに対して,BB536の摂取が寿命・ROS蓄積・遺伝子発現に及ぼす影響を評価した。 野生株の線虫において,BB536は通常餌Escherichia coli OP50と比較して,強い寿命延長作用や加齢に伴うROS蓄積抑制作用を示した。また,BB536は加齢に伴う運動機能障害やサルコメア構造の破綻を抑制した。さらに,パラコート誘導性ミトコンドリア機能障害モデルにおいても,BB536は過剰なROS蓄積を抑制し,寿命延長作用を示した。一方,加齢した線虫において,BB536は,heat shock protein 70 (HSP70)やsuperoxide dismutase 1 (SOD-1), thioredoxin-1 (trx-1), glutathione S-transferase 4 (gst-4)などの遺伝子発現を増加させ,これら抗酸化関連酵素の働きによってROSの蓄積が抑制されていることが示唆された。興味深い事に,p38 mitogen-activated protein kinase (MAPK)関連シグナル経路の変異体ではBB536の上記活性は消失した。これらの結果から,BB536による抗老化作用が示唆され,その作用機序として哺乳類まで広く保存されているMAPK関連シグナル経路を介したROSストレスに対する保護効果を誘導することと考えられる。

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© 2021 日本酪農科学会
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