2026 年 75 巻 1 号 p. 4-8
本研究では,高エネルギーX線を用いた時間分解型極小角X線散乱(USAXS)により,乳製品製造工程における凝乳挙動のその場観察を試みた。凝乳反応は凝乳酵素(レンネット)によって速やかに進行するため,遠隔操作式シリンジポンプを用いて酵素を原料乳に精密に注入できる測定システムを自作した。測定セルは酵素反応に最適な35°Cに保持し,生乳にレンネットを最終濃度20 ppmとなるよう添加した。散乱プロファイルは10秒間の露光を30秒間隔で取得し,球状粒子サイズ分布解析を適用した解析により,半径約60 nmのカゼインミセルの凝集過程を定量的に追跡することに成功した。本研究は,レンネットによる生乳の凝固過程を放射光X線により直接かつ時分割的に捉えた初めての成果であり,チーズ製造におけるカゼインミセル凝集機構の理解に新たな知見を提供する。