未来共創
Online ISSN : 2435-8010
創造から共創へ
―ライプニッツ・九鬼・中井の哲学から―
織田 和明
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 7 巻 p. 29-47

詳細
抄録
 西洋を中心とする哲学の歴史において創造論は極めて重要な位置を占めるが、共創という概念はあまり論じられてこなかったように思われる。本論では、G. W.ライプニッツと九鬼周造の哲学を創造という観点から検討し、そして中井正一の思想を参考にしながら共創を探求する理由とその方向性について考察する。  ライプニッツは苦しむ人間に配慮することなく最善世界を1人で創造する冷酷な全知全能の神を考えた。九鬼は到来する偶然を受け止めながら神秘の瞬間にマクロコスモスと共鳴するミクロコスモスのはかない美に瞬間的な共同性を求める孤独な人間を描いた。中井は集団的主体のあり方について研究し、そして様々な形で実践した。それは技術を用いて集団において積極的に他者と協力しながら創造していく方法である。より対等なもの同士の関係性の中でなされる創造としての共創に必要なものは中井が研究し、実践したような、人々が各々の能力を存分に発揮し、持続的に発展していく組織である。共創学の課題は共に創造できる機構を組織するための技術を探求することであり、そのための技術こそが我々の求める共創知である。
著者関連情報
© 2020 本論文著者
前の記事 次の記事
feedback
Top