2014 年 32 巻 2 号 p. 63-68
超音波エラストグラフィは,がんや動脈硬化,肝硬変など,組織硬化性の病変を伴う疾患の診断を目的に,組織の硬さを実時間で簡便に可視化できる方法として1990年ごろから研究開発が進められた.2003年には,最初の臨床用装置がわが国において開発されて以来,乳がん診断をはじめその有用性が実証された.そして,現在では,ほとんどすべての超音波機器メーカが,Bモード,ドプラ法に次ぐ第3のモードとしてエラストグラフィ機能を搭載した診断装置を提供するまでになった.一方で,エラストグラフィの原理は,組織圧迫によるひずみを画像化するストレイン・イメージング(strain imaging)と体内にせん断波を発生させて,その速度分布を用いるシアウェーブ・イメージング(shear wave imaging)の2つがあり,それぞれ画像の解釈や計測法に特色がある.最初の製品化から10年たった2013年には,超音波医学関連の学会で,超音波エラストグラフィの診断ガイドラインを制定する動きがはじまっている.