抄録
がん腫瘍のスクリーニングとして触診が行われてきたように,組織の硬さ(弾性)が診断に有用な情をもたらすことは古くから認識されていた.近年,画像診断において組織弾性を定量的かつ客観的に評価し,その分布を画像化するさまざまなエラストグラフィ技術が実用化され,臨床的知見の蓄積とともに診断のためのガイドラインが検討されるなど,診断技術としての地位が確立されつつある.中でも静的加圧に基づく超音波エラストグラフィは初めて実用化された技術で,すでに10年が経過し,技術的には成熟段階を迎えたといえる.その原理は,組織を静的に加圧して生じた組織内の変位分布を超音波で計測し,さらにひずみ分布を計算して,これらをリアルタイムでイメージングすることにあり,これまでさまざまな加圧方法,計測方法が開発され,発展してきた.本稿では,こうした開発の経緯も踏まえつつ,静的加圧に基づく超音波エラストグラフィの原理について概説する.