抄録
本研究では,一般廃棄物焼却灰中の金属Alと水が高アルカリ条件下で反応することにより発生する水素ガスに着目し,清掃工場に水素回収システムを導入した場合の環境経済評価を行った.福岡市クリーンパーク西部を対象とし,一般廃棄物処理における金属Alのマテリアルフロー分析および水素回収システムのLCC,LC-CO2の推計を行った.その結果,焼却残渣のうち,焼却灰には4.5%,飛灰には3.2%の金属Alが含有されており,その由来は可燃ごみが90%,不燃ごみ破砕選別後の可燃残渣に由来するものが10%であった.水素回収システムを導入した場合,水素製造量は15,435Nm3/年と計算され,LCCは291万円/年となった.水素製造単価は189円/Nm3であり,現在の一般的な水素販売価格103~113円円/Nm3の1.6~1.7倍であった.LC-CO2は1.36kg-CO2/Nm3-H2となり,一般的に環境負荷が小さいと言われている天然ガスからの水素製造(0.90kg-CO2/Nm3-H2)と比較して1.51倍と計算された.