近年,超音波を用いて生体組織の性状を定量評価するQUS(quantitative ultrasound)技術の研究開発が活性化し,超音波診断装置への実装も進んでいる.一方で,各種のQUS技術で得られる生体組織の巨視的(マクロ)な評価パラメーターの妥当性をどのように考えることができるのか,などの裏付けが必要とされており,摘出組織を対象とした細胞サイズの微視的(ミクロ)な観察と特性解析の研究も進められている.本稿では,診断装置に実装されているQUS技術の概略および関連研究の動向と,生体組織のミクロな音響的性質を理解するための技術群について解説する.また,それらを組み合わせることによるマルチスケールでの超音波定量診断の可能性について紹介する.