PETといえばPET/CTを指すように,機能的画像と形態的画像の融合が診療に与えたインパクトは大きい.近年では,CTをMRIに置き換えた研究が注目され,新しいデバイスの実用化も進んでいる.本稿では,マルチモーダルPETの現状と今後の展望について概説する.
医用画像診断装置で取得された画像は,病期分類や腫瘍の良悪性鑑別,治療技術や薬剤の評価に利用されている.画像の画素値は,ベンダーや装置,施設,患者,時間への依存性が低く,測定の繰り返し精度や再現性が高いほど,診断指標として有用性が高い.北米放射線学会は定量的イメージングバイオマーカー連合(Quantitative Imaging Biomarkers Alliance; QIBA)を組織し,研究者や医療専門家,製造業者が協力して,定量イメージングと臨床試験や臨床診療におけるイメージングバイオマーカーの使用を推進している.日本では,日本医学放射線学会がJapan-QIBAを組織し,QIBAと連携した活動をしている.これらの中より,本稿では,生体軟組織の粘弾性分布を画像化するエラストグラフィーの標準化に向けた活動について紹介する.
近年,超音波を用いて生体組織の性状を定量評価するQUS(quantitative ultrasound)技術の研究開発が活性化し,超音波診断装置への実装も進んでいる.一方で,各種のQUS技術で得られる生体組織の巨視的(マクロ)な評価パラメーターの妥当性をどのように考えることができるのか,などの裏付けが必要とされており,摘出組織を対象とした細胞サイズの微視的(ミクロ)な観察と特性解析の研究も進められている.本稿では,診断装置に実装されているQUS技術の概略および関連研究の動向と,生体組織のミクロな音響的性質を理解するための技術群について解説する.また,それらを組み合わせることによるマルチスケールでの超音波定量診断の可能性について紹介する.
本稿では,マクロとミクロを結ぶメゾスコピックの観点から,マイクロCTの紹介と,マイクロCT画像を用いたメゾスコピック領域における解剖学的構造の認識などについて紹介する.加えて,マイクロCT画像を用いたマクロCT画像の超解像化について触れる.マイクロCTを用いれば,細胞レベルでの解剖学的構造とマクロレベルでの解剖学的構造の中間である,メゾスコピック領域の解剖学的構造を撮像することが可能となる.マイクロCTによるメゾスコピック領域での解剖学的構造のイメージングとその前後の領域におけるイメージングとの統合によって,解剖学的構造のスケールシームレスな解析が可能となり,新たな学術分野の展開が期待される.
筆者らは,マルチモーダル・マルチスケール画像解析の例として,脳のMR画像と病理画像を関係づける取り組みを行った.本稿では摘出脳標本のMR画像と,その標本から作製した多数の病理標本とを位置合わせする技術や,高精細の画像を粗い空間分解能の画像に位置合わせする際のダウンサンプリングでの工夫など,本取り組みで開発した要素技術といくつかの実験結果を紹介する.