2024 年 42 巻 3 号 p. 94-99
画像生成AI の登場は,簡単な言葉(プロンプト)によって地図を生成する可能性を開いた.本稿では,画像生成AI による地図の作成を試行したうえで,その研究利用の可能性と課題,また地図理解に与える影響を検討した.結果として,画像生成AI は世界地図などをそれらしく描くものの,都市スケールのような中~大縮尺図や,地図の細部を正確に描くことはできなかった(2023 年12 月時点).生成されたのは,地理情報を伴わない地図の意匠である.他方で,部分的な改描はある程度の質を維持して可能であるなど,事実よりも架空・虚偽の地図を生成しやすいことが指摘された.画像生成AI は景観評価に関する研究などへの応用が期待される一方,現存または実在しない地図の生成が学術研究に悪影響をもたらすことも懸念される.この新たな技術が私たちの地理的想像力や空間認知にどう影響するのかは未知数であり,それゆえ継続的な議論が求められる.