2026 年 44 巻 2 号 p. 80-85
静脈血栓症は高致死率を呈する心血管疾患であるが,同一生体内にて微小血栓発生から成熟血栓へと成長していくメカニズムは十分に理解されていない.そこで本研究では,金ナノ粒子をX線造影剤に用いたin vivo CTイメージングから,血栓の成長過程の可視化を試みた.その結果,モデルマウスの静脈血栓(短径約200 μm)の成長過程を,血栓と静脈壁の空間情報を保持したまま経時的に観察することに成功した.また,シンクロトロン放射光を用いたX線CT計測により,摘出血栓内部の細胞・タンパク質の分布とそれに基づく多層構造の形成過程を可視化することができた.さらに,成長した血栓内には金ナノ粒子が局在することを見出し,血栓内免疫細胞動態との関連が示唆された.以上の成果は,血栓形成から成長,溶解,さらには遊離に至るまでの一連の過程を理解するための手法を提示するものであり,静脈血栓症の病態解明と治療戦略の確立に寄与すると期待される.