抄録
本稿では,隣接領域の研究を参照しつつ,管理会計研究における神経科学の応用可能性を探究する。まず,社会科学研究において現実世界を生きるヒューマンの分析を行う際,神経科学を応用する意義があるという前提を整理した。つぎに,神経経済学,消費者神経科学,経営学,そして管理会計学の各研究の文献レビューから,様々な領域の社会科学研究において実際に神経科学が応用されている実態を明らかにした。以上の情報から,仮説構築や結果の解釈,仮説検証手法の選択,隣接領域からの理論の参照,そして幅広い組織成員がどのようにコントロールへ対応するかという問題の分析といった各場面で,管理会計研究において神経科学を応用できる可能性を示した。