抄録
本稿は旧・三田工業株式会社におけるアメーバ経営の導入事例を分析している。具体的には,京セラにおいて長年のプロセスを経て現在の形に至った同経営手法が,会社更生法の適用を経験し,短期間での抜本的事業再生を求められる状況にある中で,どのように導入され,また被導入企業において受け入れられるようになったのか,という点に焦点を当てて分析を行っている。その結果,①京セラにおけるアメーバ経営をそのまま同社にあてはめて実践するのではなく,既存のビジネスモデルとの「融合」が図られながら導入が行われたこと,②当該プロセスを通じて,アメーバ経営における基本的な価値観や考え方が,被導入企業側の従業員に受容され,組織全体に浸透するようになった,という2点が明らかになった。