抄録
大手化学メーカー58社を対象に,2000年3月期から2010年3月期までの11年度を3期に分け,各社の中期経営計画の遂行度を内容面と総合形式面から評価した。コントロール変数を加味した回帰分析結果は,経営成果変数ROAでは中期経営計画遂行度評価の内容面と総合形式面とも有意であり,第2期を除きROAを押し上げる効果があることを示した。これに対し,時価総額上昇率では逆説的に第2期の遂行度のみが押し上げ効果があるという結果を示した。これらから,中期経営計画が成果指標に及ぼす影響は一律ではなく,経営成果指標や中期経営計画の評価時期や内容によっても異なること,ROAでは中期経営計画の統制効果が,時価総額上昇率では積極投資の遂行度が経営成果につながったことを示唆している。