抄録
Candida albicans NBRC1385の培養上清から得られるmannoprotein-β-glucan complexであるCAWS(Candida albicans water soluble fraction)は,マウスに対して血管炎誘発活性を持つ.このCAWS血管炎は,マウスの系統によりその感受性が大きく異なる.そこでCAWS血管炎抵抗性のCBA/Jと,CBA/Jと同じ起源でありBruton’s tyrosine kinase(Btk)を欠損したCBA/Nを用いて,CAWS血管炎の発症や抑制に関わる因子について検討した.その結果,CBA/Jでは内在性マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤であるTIMP1産生が観察された.また,種々のPAMPs刺激によりCBA/Nマウス脾臓細胞は炎症性サイトカインであるIL-6,IFN-γ産生が誘導され,CBA/Jマウス脾臓細胞は免疫抑制作用のあるIL-10産生が誘導された.さらにマウスIL-10cDNAを組み込んだプラスミド(pCAGGS-mIL-10)を用いて遺伝子治療を行い,IL-10がCAWS血管炎の発症抑制に関与するか検討した.その結果,pCAGGS-mIL-10はCAWS血管炎の発症を抑制した.これらの結果から,サイトカイン産生応答の違いがCAWS血管炎発症に密接にかかわっていること,IL-10はCAWS血管炎の抑制に関与することが強く示唆された.