2020 年 31 巻 1 号 p. 3-10
理学療法診療ガイドライン第1版が出版され,理学療法士の間で利用する人が増えてきている一方で,エビデンスに基づいたEBPTはなかなか地に足がついて進んできていない。その原因を,理学療法士の資質や制度を概観して検討すると,その原因の代表的なものの一つに療法士と患者間のコミュニケーションの在り方があると認識できる。患者への説明や患者の診療の選択の意思決定ツールとしてガイドラインの利用が望まれる。また,理学療法の思考過程の中で経験則や思い込みなどだけではなく,理学療法の臨床判断の特殊性も加味しながら,テクニカルスタンダード,ガイドライン,エビデンス,個別性を考えEBPTの5つのステップに沿って思考過程を展開し,検証することが重要であることを強調したい。最後にEBPTを知識として持っているのではなく,まずは患者さんとしっかりコミュニケーションをとり,さらにEBPTを実施することがガイドライン活用の第一歩と考える。