2021 年 32 巻 1 号 p. 23-29
人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty: 以下,THA)は疼痛緩和に有効であるが,約10%の患者が慢性痛を発生するとされている。慢性痛発症の危険因子として術前の心理的要因の関与が指摘されている。心理的要因が急性痛へ与える影響を明らかにできれば,より早期から急性痛に対応し,慢性痛を防ぐことが期待できる。目的はTHA患者の術前の心理的要因が術後痛に影響するか検討することである。対象は当院でTHAを受けた12名とした。JHEQ,PCS,PSEQ,HADS,CSI-9を術前に聴取し,術後1~3日目にそれぞれ安静時の創部痛をVisual Analog Scale(VAS)にて計測した。結果,PCS ,HADS,CSI-9とVAS間に有意な正の相関,PSEQとVAS間に有意な負の相関が認められた。術前の心理状態が術後の疼痛に影響することが示唆され,術前より術後痛の経過や対処法の指導を実施するなど心理面からの介入を行っていくことが重要である。