Papers in Meteorology and Geophysics
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原著論文
雪片の落下速度の確率分布関数について
佐藤 純男松尾 敬世
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1980 年 31 巻 2 号 p. 61-79

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抄録

 落下速度の分散を考慮して、雪片の成長過程を論ずるには、落下速度の確率分布関数、即ち、質量MM+ΔMの雪片が落下速度VV+ΔVをもつ、条件付確率P(V|M)ΔM・ΔVを求める必要がある。
 このために、雪片の落下速度、質量、垂直断面積の同時測定を行なった。測定は、1978年1月27~28、29日~30日、1979年2月2日、2月4日の4回の降雪について行なった。観測場所は、新潟県、長岡市の雪害実験研究所構内である。
 観測装置の概観はFig. 1に示した。落下速度は、一定間隔にセットされた2つのphoto-coupler間を落下する雪片の通過時間から求めた。断面積は、photo-couplerに同調させた、単発フラッシュによる写真撮影から測定し、質量の決定は、濾紙法に依った。
 各降雪毎に求めた、雪片の質量、断面積、落下速度の頻度分布をFig. 3に示した。これから、各降雪の粒度特性が推定出来る。又、質量M(mg)、落下速度V(cm/s) のデーターをM-V座標にプロットして、Fig. 4-a~dを得た。いずれの降雪でも、M-V関係は大きな分散を示している。特に質量のちいさい雪片ほど分散は大きい。これは、meltingの度合が、落下速度に大きく影響するためと考えられる。(Fig. 5)
 安定した速度分布関数を得るため、上記4降雪を一括して扱った。この母集団に対する、質量、断面積及び落下速度の頻度分布はFig. 8に示した。これらは北陸の雪片に対する平均特性を示すものと考えてよかろう。
 質量~落下速度の同時観測データー327ケを、質量間隔ΔM=1mgの部分母集団に分け夫々の部分母集団について、速度の頻度分布を求め、これを速度分布関数P(V|M)ΔMΔVとした。ここで速度間隔ΔV=10cm/sにとった。速度分布関数の特質は
  (1) すべての速度分布関数P (V|M) ΔM・ΔV (M=0, 1, 2,…) は、数ケの要素Gauß分布の一次結合で示すことが出来た (Fig. 9, 10)
  (2) これらの要素Gauß分布の中で、速度分布関数に30%以上寄与する2つの主Gauß分布が存在した。この主Gauß分布の中、大きい平均値をもつものを第1種Gauß分布、ちいさい平均速度のものを第2種Gauß分布と呼んだ。
  (3) 第1種、第2種Gauß分布の平均落下速度は質量M (融解直径D) と共に増加し、第1種Gauß分布に対し

V=292D0.46,
第2種Gauß分布に対し
V=203D0.39,
で近似出来た。一方標準偏差は、質量に関係なく、ほぼ一定12cm/sであった。従って、今回観測した、雪粒子の70~80%は、標準偏差12cm/s、平均速度V1あるいはV2をもつ正規分布のいずれかに属しているといえる。
 質量~断面積の関係はFig. 11に示した。この関係も、大きな分散を示しているが、平均的に
M=0.012S3/2,
で示すことが出来た。この係数0.012は、雪片の密度及び形の関数である。

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© 1980 気象庁気象研究所
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